第3回 人工知能研究は60年前、始まった!~ニューロンという電気回路の発見と電算機の発明
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みなさんはホンダの二足歩行ロボット・アシモやソフトバンクのPepperをご存知と思います。ここで1つ質問です。アシモやPepperに、知能はあると思いますか?どちらも人間みたいに喋ったり、妙に人間ぽい動きをしたりもします。Pepper君はなんでもその場の空気を読んで応答するらしいから、人工の知能は入っていると思わせるかもしれません。確かにいろんなプログラミングの条件分布でロボットが何か考え動いているかのように見せる工夫はあります。しかし、基本的に今のところ人型ロボットといえども、仕組まれたプログラム通り動いているにすぎません。ロボットの人工知能は、まだ人間の脳ほど十分とは言えないんです。
ここから人工知能研究の歴史をみていきたいと思います。人工知能研究と他の学問、例えば物理や数学や生物との違いは何でしょう。大きな違いは、他の学問が少なくとも200年以上の歴史を持つのに対し、人工知能研究がわずか60年前に誕生し、その後急激に発展した学問だということなんです。
その背景ですが、人工知能が生まれる60年より少し前、2つの大きな発見と発明がありました。1つは脳の中のニューロンという神経細胞の働きが詳しくわかってきたこと。もう1つは電子計算機の発明です。
人間の脳は大脳、小脳合わせて1000数百億個のニューロンが詰まっていて、電気的な信号を送るネットワークを形成しています。つまり脳のネットワークは電気回路と同じ仕組みだということがわかったのです。もう少し詳しく説明すると、ニューロンの膜電位が変化するとパルスがタタタタタと走り、他のニューロンに信号を送ります。その刺激がある程度たまると、他のニューロンが発火する。それによって脳の中の興奮状態と非興奮状態を瞬時に切り替えるスイッチの役割を果たす。そういうオンとオフのスイッチの切り替えが脳の電気回路の基本的な原理だということがわかってきました。これが現在の人工知能研究につながる一番の核心部分です。
もう1つの大きな出来事=電子計算機の発明のきっかけは、冷戦から生まれました。精密なミサイルの弾道計算をしたいことからでしたが、1946年、世界初のデジタルコンピュータ「エニアック」が誕生しました。電子計算機はご存知のように、電気回路そのものです。1940年代のこの2つの大発見と大発明が、その後の人工知能研究の誕生につながってきます。
つまり、脳というものが、ニューロンが基礎になっており、電気回路のスイッチに近い働きをしているということから、人間の脳に匹敵する人工知能モデルが、電子計算機による「ニューロンモデル」のネットワークで、できるんじゃないかと、考える人たちがいたのです。