環境影響評価

化学物質

リサイクルや埋立で環境中に放出された化学物質の汚染実態


水川薫子先生

東京農工大学 農学部 環境資源科学科

出会いの一冊

地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの

日本環境化学会(ブルーバックス)

本書は私が所属する日本環境化学会のいろいろな研究者が書いた本で、環境汚染の歴史に学びつつ現状を知ることができる1冊となっています。

私が研究対象としている有機化合物による汚染以外にも、元素や重金属による汚染、大気の汚染、ヒトを含めた生物への影響などが紹介されています。ぜひいろいろな種類の汚染を知ってもらい、いずれかの話に興味をひくものがあったら嬉しいです。

こんな研究で世界を変えよう!

リサイクルや埋立で環境中に放出された化学物質の汚染実態

化学物質はどこへ?

みなさんは自分の生活の中でどんな“化学物質”を使っていますか。洗剤、薬、化粧品…いろいろありますよね。そしてみなさんが知らないうちに使っている化学物質もたくさんあります。でも、それらが使われた後、どこに行っているのかはあまり知られていません。私はそんな“人間が使っている化学物質”による環境汚染の研究をしています。

排泄されやすい化学物質、体内に溜まりやすい化学物質

人間が使っている化学物質も、環境中に出てしまえば自然の循環システムに乗って動きます。

水に溶けやすい化学物質は水に溶けて動き、生物に取り込まれても排泄されやすい。一方、水に溶けづらい化学物質は水中の粒子にくっついて動き、生物に取り込まれると体内に溜まりやすい。化学物質の性質が、環境中での動き方に大きくかかわってくることを大学の講義で学んで興味を持って、この分野の研究を始めました。

人間が作った循環システムの中で化学物質が巡っている

近年、プラスチックごみによる環境汚染が大きく問題になっています。実はプラスチックの中にも、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの「添加剤」が含まれています。プラスチックがリサイクルされると添加剤も一緒にリサイクルされてしまいます。

また、ごみを捨てた後、燃えないごみは埋立地に埋められますが、雨が降るとごみから溶け出した化学物質を含んだ「浸出水」という水が溜まっていきます。浸出水は処理をされて川に流されますが、処理ですべてきれいになるわけでもありません。

今は、リサイクルされたプラスチックや浸出水にどんな物質がどのくらいの濃度で環境中に出ているかを調べています。どちらも、人間が作った循環システムの中で化学物質が巡っている点が面白いなと思っています。

プラスチックごみによる化学物質汚染を調べに、沖縄の離島に行くこともあります。
プラスチックごみによる化学物質汚染を調べに、沖縄の離島に行くこともあります。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

環境問題にはなんとなく興味を持っていたので、自然相手のことを学ぶならと思って高校での進路選択は理系にしました。中高生の頃にダイオキシンや内分泌かく乱物質(環境ホルモン)による環境汚染の問題も起きていたことも、この分野への漠然とした関心はあったと思います。

大学入学時から研究者を目指していたわけではなかったのですが、卒論で取り組んだテーマが面白かったことが具体的に研究の道を考え始めたきっかけでした。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「埋立およびリサイクルによるプラスチック添加剤の環境汚染実態の解明」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生と一緒に実験する様子。生物に蓄積する化学物質も追っています。
学生と一緒に実験する様子。生物に蓄積する化学物質も追っています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) コンサルタント・学術系研究所

(2) その他の化学系

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 技術系企画・調査、コンサルタント

(2) 品質管理・評価

(3) 設計・開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私の所属する農学部環境資源科学科は、大きく分けて二つの分野があります。ひとつは環境系の分野で、こちらは自然環境の状態や仕組みを調べる分野です。私もこの分野に属しています。もう一つは資源系の分野で、バイオマス、特に二酸化炭素の貯蔵庫でもある植物資源を有効利用するための研究を行っている分野です。地球環境の現状を調べるだけでなく、環境調和型の資源利用を考えるための幅広い知識も学ぶことができる学科は本学科ならではだと思います。

多摩川の水を採水中です。下水処理水から入ってくる化学物質も調べています。
多摩川の水を採水中です。下水処理水から入ってくる化学物質も調べています。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

沈黙の春

レイチェル・カーソン 渡辺政隆:訳(光文社古典新訳文庫)

化学物質による環境汚染に対して警鐘を鳴らした、私の分野のレジェンド的一冊です。私も高校生の頃に読みました。新訳版も出ているのでぜひこちらを。


風の谷のナウシカ

宮崎駿(徳間書店)

自然と人間の共存を問う大作です。映画版はほんの一部なので、ぜひ漫画版を!


世界は基準値でできている 未知のリスクにどう向き合うか

永井孝志、村上道夫、 小野恭子、 岸本充生(ブルーバックス)

環境汚染と切り離せないのが基準値です。世の中のあの基準値はどうやって決まったの?という疑問に答える”基準値のからくり”の続編です。世界の仕組みの裏側を覗いてみたい方はぜひ。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

国ではないのですが、宇宙では一度暮らしてみたいですね。無重力を体験してみたいし、大気圏外から星を眺めてみたいです。せめて生きているうちに行くだけでもできるといいなと思っています。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

Q1と関連しますが、『オデッセイ』という映画です。火星でサバイバルする話です。飛行機の中で見ただけにもかかわらず、逆境の中工夫して生き延びていく様がやけに印象に残っています。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

写真部と、せっかく農学部に入ったことだしと農業系のサークルに入っていました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

金継ぎで壊れたお皿などを直しています。