土木計画学・交通工学

環境と経済のバランス

環境保全と経済活動のバランスを数理モデルで分析


玉置哲也先生

香川大学 創造工学部 建築・都市環境コース(創発科学研究科)

出会いの一冊

データ分析の力 因果関係に迫る思考法

伊藤公一朗(光文社新書)

ビッグデータやデータサイエンスという言葉を耳にする機会も多いと思います。実際、社会は様々なデータで溢れています。このようなデータをうまく活用できれば、個人や企業だけでなく社会全体にとっても有益な情報を導くことができます。しかしながら、分析方法を誤れば、間違った判断をしてしまう危険性があります。

これからの時代、どの分野に進んでも「データ」を活用する機会があると思います。この本は、データを分析・解釈するための心構えを教えてくれる一冊となるでしょう。

こんな研究で世界を変えよう!

環境保全と経済活動のバランスを数理モデルで分析

人口減少と地球温暖化

日本では人口減少に突入しており、特に地方の町や市の元気がなくなり、日本全体の働く力も弱まることが心配されています。さらに、地球温暖化は早急な対策が必要な大きな問題で、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す必要があります。

人口減少と地球温暖化という二つの課題は、どちらも日本が将来にわたって暮らしやすい国であり続けるために無視できるものではありません。

地方都市こそ自然資源が重要

地方都市では特に、自然と共に生きる社会や都市に一極集中しない分散型の社会づくりが重要となります。自然環境は食料やエネルギー資源だけでなく、空気や水、土地など、生きるために欠かせない資源も与えてくれます。

しかしながら、使いすぎや環境への負荷が続けば、こうした資源も危うくなります。そのため、人口減少や地球温暖化の影響を考えながら、私たちの経済活動と環境のバランスを考える必要があるのです。

増えすぎたウニ 経済も環境も壊す

例えば、漁業と環境のバランスの事例として、ウニによる磯焼け問題があります。温暖化により食欲旺盛なウニが増え、海藻を食べつくすことで、魚の産卵場としての藻場がなくなることを磯焼けといいます。

ワカメやコンブといった海産物の収穫量の低下だけでなく、漁獲量の低下にもつながるリスクがあります。増えたウニを商品化すればよいと思うかもしれませんが、海藻が食べつくされた状況ではウニの中身がスカスカで商品としての価値は期待できません。

では、どのようなタイミングでどれくらいウニの駆除をするのが望ましいのでしょうか。私は、そのような環境保全と経済活動のバランスを数理モデルや実データを用いて分析する研究をしています。

藻場造成のための構造物に集まるウニ
藻場造成のための構造物に集まるウニ
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校時代は建築家に憧れ、大きな構造物を造るならと軽い気持ちで土木系の学科に進みました。ただ土木では、製図や設計といった講義はほとんどなく、当てが外れたというのが大学入学直後の記憶です。

しかし、幸いなことに土木学科の講義科目は思っていた以上に幅が広く、経済学に関連する講義もありました。その時、土木でも経済学にかかわる知識を必要とする分野があることを初めて知りました。また、文系科目だと思っていた経済学ですが、数学的素養が求められることを知り、その面白さに引き付けられたのがきっかけです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「地方都市の持続可能性評価に向けた経済生態系統合モデルの開発とその適用」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
紫雲出山から見た瀬戸内海の島々
紫雲出山から見た瀬戸内海の島々
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(2) 建設全般(土木・建築・都市)

(3) コンサルタント・学術系研究所

◆主な職種

(1) 技術系企画・調査、コンサルタント

(2) 生産管理・施工管理

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

香川大学の創造工学部建築・都市環境コースの特徴は、建築学と土木工学と環境学が融合しているところです。語弊を恐れずに言えば、建築学は個々の視点から、土木は全体的な視点から、「暮らしを豊かにする空間を計画(デザイン)する」ための学問です。その両方の視点から街や建物を見る目を養うことができるのは本大学の特徴です。

さらに、住環境・自然環境といった生活に欠かせない周辺要素を加え、総合的に空間をデザインするスキルを学ぶことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

身近な干潟や森林にはどのような生き物がいるでしょうか。また、昔はどのような生き物がいたでしょうか。もし減ってしまった生き物、増えた生き物がいるならば、なぜそのような変化が起こったのでしょうか。その原因は人の手によるものなのでしょうか。原因と結果を意識しながら、変化を考察し今後どのような影響が起こりうるか調べてみましょう。

中高生におすすめ

進化する里山資本主義

藻谷浩介:監修(ジャパンタイムズ出版)

地方都市は高齢化や人口減少で衰退の一途をたどると考えている人も少なくないと思います。実際、多くの地方自治体にとって少子高齢化問題は喫急の課題ですが、この本では地域経済に希望をもたらす地方都市発の取り組みがたくさん紹介されています。

将来、地元で起業したい人・地方都市に活気を取り戻したいと考えている人にお勧めの本です。


それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子(新潮文庫)

私の研究とは全く関係のない本です(笑)。近代史、特に日清戦争から太平洋戦争までにフォーカスを当てて、実際に高校生に対して行った講義をベースに執筆された本です。

高校時代、暗記科目としてしか歴史を見ておらず苦手科目でしたが、この本では、単に歴史的な教養を学ぶだけでなく、「なぜ歴史を学ぶべきか」、「どのように歴史を学ぶべきか」を教えてくれます。


ウニはすごい バッタもすごい デザインの生物学

本川達雄(中公新書)

少し難しい内容も含まれますが、生き物が好きな方にはお勧めです。ウニやナマコは(人間から見れば)変な形の生き物かもしれませんが、あの小さな体に驚くべき機能があったりします。この本読んでおけば、海や自然でこれらの生き物に出会うとテンションが上がりますよ。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

数学や経済の基礎をしっかり学べる理学部や経済学部は興味があります。小さい生き物(昆虫、魚類、両生類、爬虫類)も好きなので、そういった生物の分類学も学んでみたいですね。迷います。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

『ウォルター少年と夏の休日』:ファンキーなおじいさん達が魅力的です。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

ハンドボールサークルを立ち上げました.

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

研究室の先輩からの紹介で、河川の土壌サンプルに混在する土壌生物数のカウントするバイトをしたことがあります。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

同僚とテニスをしています。また、最近は折り紙にもはまっています。子供のころにTVチャンピオンの折り紙王選手権でみた神谷哲史氏の作品が本になっていることを知り、再熱しました。