遺伝・染色体動態

ヒトのDNA

ウイルス由来DNAが、脳の進化にどう貢献してきたか


鈴木俊介先生

信州大学 農学部 農学生命科学科(総合理工学研究科 農学専攻)

出会いの一冊

ゲノム革命 ヒト起源の真実

ユージン・E・ハリス、訳:水谷淳(早川書房)

この本は、人類の起源や進化に関するゲノム研究について、比較的新しく刺激的で興味深い結果を織り交ぜながら、専門知識のない人にも理解しやすく解説しています。

特に「第5章 われわれがヒトであることに関して、ゲノムは何を語るのか?」の部分が私の興味と研究分野に近いです。私たち自身のゲノムに秘められた人類進化の軌跡を読み解くことで、具体的にどのようなことが明らかになってきたかを実感し、この研究分野に少しでも知的興奮を感じていただければと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

ウイルス由来DNAが、脳の進化にどう貢献してきたか

進化の要因にもなるウイルス感染

近年COVID-19の世界的大流行で皆さんも実感したとおり、ウイルス感染は短期的には生物に害を及ぼすことが多々あります。

しかし長期的な視点でみると、感染した際にゲノムの中に入り込むタイプのウイルスの感染は、生物の生存に有利となる新たな遺伝子や遺伝子の働きを調節する新たなスイッチとなるゲノム機能を獲得するチャンスでもあるため、進化につながる重要な要因の一つだと考えられています。

実際、ウイルス由来の外来DNA配列は地球上のあらゆる生物のゲノム中に存在し、私たち人類のゲノム配列の実に約半分は外来DNA配列とその残骸で占められているのです。

ヒトだけがもつDNA配列に注目

私の研究室では、その中でチンパンジーなどヒトと近縁な霊長類のゲノムには存在しない、ヒトだけがもつDNA配列に着目し、人類の特徴である大きな脳と高度な精神活動に関わる可能性のあるヒト特異的ゲノム機能を探索する研究を行っています。

この研究は、人類がサルの仲間からどう進化してきたかという、誰もが興味を抱く地球史上非常に重要な問いの答えにつながっています。

病気のリスクも明らかに

それと同時に、私たちのゲノムが抱えている、精神病などヒトに多く見られる疾患のリスクを新たに明らかにできる可能性を秘めています。進化的な観点からなぜヒトがある病気になりやすいのかを理解する、こうした研究の積み重ねは、将来的に病気の原因や分子機構をより深く理解し対策につなげるために不可欠です。

近年特に世界中で厄介視されているウイルスですが、ヒトゲノム中の外来DNA配列が私たち人類の進化にいかに貢献してきたのかを、遺伝子や細胞レベルで具体的に解明していきたいと思っています。

ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞の遺伝子操作を行います。
ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞の遺伝子操作を行います。
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「ヒト特異的転位因子による遺伝子発現調節と脳の進化」

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研究テーマごとにグループに分かれてチームワークで研究を進めます。
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中高生におすすめ

魔女の宅急便

原作:角野栄子、監督:宮崎駿

家族と暮らしていた主人公が両親のもとを離れ、知らない街での様々な経験を通じて、時には悩みながらも少しずつ成長、自立していく様子が描かれています。

大学に入学して初めて一人暮らしを始める皆さんへのエンカレッジになるかもしれません。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

医学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

オーストラリア(信州に来る前にメルボルンに留学していて、様々な国からの移民が多く文化的多様性がとてもおもしろいと感じたため)

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

家庭菜園 / 大衆酒場めぐり

Q4.好きな言葉は?

自分とは、あくまで自然現象の一部に過ぎない


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