科学社会学・科学技術史

科学的リテラシー

科学への信頼が揺らぐ今、科学的リテラシーのあり方を考える


標葉靖子先生

実践女子大学 人間社会学部 社会デザイン学科(2024年度新設)(人間社会研究科)

出会いの一本

機動戦士ガンダム 水星の魔女

サンライズ:企画・制作

言わずと知れたSFの名作、ガンダムシリーズのTVアニメ最新作。

本作は従来の「宇宙世紀」に属さないアナザーガンダムで、超巨大企業間での覇権争いが背景となっています。学園に通う少女が主人公の物語であり、国家間の戦争を背景とした初期ガンダムとはまた異なる魅力があります。

ネタバレ回避のため詳細はあえて触れませんが、最先端科学と人間、そして社会のあり方について、科学技術社会論の観点からの問いかけが豊富にできるSF作品です。特に、情報技術の進展やメタバースが人間・社会のあり方に何をもたらすのかについて関心のある方におすすめです。

こんな研究で世界を変えよう!

科学への信頼が揺らぐ今、科学的リテラシーのあり方を考える

災禍で混乱した「科学的正しさ」

福島第一原発事故(3.11)や新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大をめぐって、近年日本において科学や専門家による科学的助言等への信頼が揺らいだと言われています。

それぞれの災禍のなかで、何が「科学的に正しい」のか、どのような行動が「正しい」のか、メディア言説は大いに混乱していました。

知識があればよいのか

「人々は知識がないからリスクを過剰に評価する」「知識があれば人々は(当該技術を)受容する」といった考えに基づき、科学的知識の伝達だけで問題を解決しようとする考え方のことを「欠如モデル」と言います。

しかしながら、科学的知識があるかどうかは、人々のリスク認知や実際にどのような行動をとるかに影響を及ぼす要素の一つではあっても、すべてではありません。ところが、3.11やCOVID-19のように科学・技術が関わる問題が顕在化するとき、権威側(その科学・技術の専門家や国など)はどうしても「欠如モデル」的コミュニケーションをとってしまいがちです。

メディア言説を分析、問いに挑む

科学技術の進展は著しく、次々と新しい知が生み出されています。

科学技術と社会の関わりがますます複雑になり、不確実性も高まっていくなかで、専門家ではない人々はどのような科学的リテラシーを身につければ良いのでしょうか。そもそも、身につけるべきだというリテラシーの中身を決めるのは誰なのでしょうか。

私は、科学・技術が関わる問題をめぐるメディア言説を分析しながら、そうした問いに挑んでいます。

テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと大学院では生命科学を専攻し、植物分子生物学とバイオインフォマティクスを掛け合わせた研究で博士号を取得しました。その後、民間企業での新事業開発業務に従事するなかで、科学技術と社会の界面に生じるさまざまな問題解決のために何ができるのかに関心を持ったことが、今の分野に進むことになった理由です。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「日本の科学技術リテラシー像構築の議論における「専門家」の政治性に関する研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
4S 2023 Honolulu(国際科学技術社会論学会, ホノルル開催)での研究発表の様子
4S 2023 Honolulu(国際科学技術社会論学会, ホノルル開催)での研究発表の様子
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) コンピュータ、情報通信機器

(2) ネットサービス/アプリ・コンテンツ

(3) 小売(百貨店、スーパー、コンビニ、小売店等)

◆主な職種

(1) セールスエンジニア・技術営業

(2) コンテンツ制作・編集<クリエイティブ系>

(3) 商品企画、マーケティング(調査)

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

実践女子大学人間社会学部は、人間社会学科・ビジネス社会学科・社会デザイン学科の3学科で構成されています。

本学部の特徴の一つが、1年次は学部に所属して社会学・心理学・経済学・経営学などの基礎分野を幅広く学んだ上で、2年次から個々の関心や目標に合わせて学科を選択できることです。私が所属する社会デザイン学科の専門領域はソーシャル・データサイエンスやメディア情報学、科学技術社会論などですが、幅広い視野を持っているからこその分野横断的な研究テーマに取り組むことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

文系と理系はなぜ分かれたのか

隠岐さや香(星海社新書)

「文系/理系」という雑な区分けに縛られることの愚かさに気づかせてくれる良書です。「文系/理系」という区分けの歴史的経緯から、受験や就活、ジェンダー、研究の学際化などの現代的な課題についても触れられています。


公共性

齋藤純一(岩波書店)

さまざまな領域で分断や対立が可視化されるようになった現代社会において、改めて「公共性」とは何かを考えることができます。少し背伸びをしてみるという意味でも、ぜひ高校時代に挑戦してみてほしい一冊です。


科学は誰のものか 社会の側から問い直す

平川秀之(NHK出版)

2010年に出版された本ですが、その後の東日本大震災や COVID-19 パンデミックにおいて起きた科学情報をめぐる混乱を考える上でも、今なお有効な視座を与えてくれる一冊です。

一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

Beyoncé: アルバム『LEMONADE』が好きで、なかでも「Formation」を聴くと仕事がはかどるような気分になります。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

『ロード・オブ・ザ・リング』(The Lord of the Rings)三部作: 子どもの頃に夢中になって読んでいた「指輪物語」(トールキン著)の世界観が、想像を超える壮大なスケールで映像化されたことに感動しました。

Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

『グランツーリスモ』シリーズ: レーシングコックピットを自宅に装備する程度には好きですが、子どもができてからは時間と場所がなく、片付けられたままになっています。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子育て: 大変だけど、めっちゃ楽しい!


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ