ブラックホールを見つけた男
アーサー・I・ミラー(草思社文庫)
インドの天文学者、チャンドラセカールについて書かれた本です。19歳の若きチャンドラセカールは、白色矮星の質量には上限があるという、重大な発見をします。今日「チャンドラセカール限界」と呼ばれる重要な理論であり、近年わかってきた宇宙の加速膨張の観測なども、この理論を元にしています。
しかし、師事するエディントンには無下に否定され、若きチャンドラセカールの心はひどく傷つきます。このような重要な科学的発見の背景にも、簡単に語れない人間ドラマがあり、これは今も昔も変わりません。
そして、重要な科学的発見が19歳の青年によってなされており、今、高校生の皆さんにとって、決して遠い未来の話でも、遠い世界の話でもないことを、感じ取っていただきたいと思います。
磁場の観測から、銀河の成り立ち解明に挑む!
銀河全体を貫く磁力線
私たちの住む地球が磁石になっているということは、皆さんもよくご存知だと思います。このおかげで、方位磁針を持っていれば、どの方向が北か、すぐに分かります。さらに、太陽にも磁場があって、そのおかげで、黒点が作られ、太陽の活動が変化しています。
さらに、もっと大きな視野で宇宙を見てみると、実は、私たちの住む天の川銀河にも、銀河全体を貫く磁力線が走っているのです。私たちの住む天の川銀河には台風のような形の渦状腕がありますが、磁力線は、その渦状腕に沿っているのです。
謎の多い銀河の磁場構造
現在、銀河の磁場構造で、よくわかっていないのは、磁力線の向きです。方位磁針があれば、N極を指す方向になります。ある銀河では、どこでも磁力線が銀河の中心方向を向いていますが、別の銀河では磁力線の向きが領域ごとに入れ替わっていたりします。
このような銀河の大局的な磁場構造が、どうして生じたのかは、いまだに解決していません。
観測法を考案、どんな磁力線も描ける
そもそも、このような磁力線の方向を調べる術すら確立しておらず、いまだに研究者によって、銀河の磁場構造の解釈が異なっています。
私たちの研究グループは、近年、磁力線の方向を調べる方法を考案し、どんな銀河の磁力線でも、描けるようになりました。そこで、山口大学と国立天文台等の共同研究者たちと一緒に、銀河の磁場構造を調べるための観測を行うことにしました。現在、データを取得するための、装置を作成し、試験観測を行っています。
近い将来、たくさんの銀河の磁力線を明らかにし、その磁場構造の起源を明らかにしたいと考えています。
中学3年生の時に、将来宇宙の研究をしてみたいと考え、高校に入ってすぐに部活動の一環として太陽黒点のスケッチをしたり、流星群の観測をしたり、天体写真を撮って自分たちで現像したりの毎日を送っていました。
天体写真の撮り方などは、当時分かる人がおらず、インターネットも普及する前だったので、図書館や書店、古本屋さんで色々な入門書や雑誌などを探しながら、手探りでやっていました。
大学では観測的な研究をやってみたいと考え、学部4年生の時に電波天文学、銀河天文学を専門とする研究室を選びました。それ以来、電波天文学、銀河天文学を専門として研究に取り組んでいます。
「単一鏡偏波観測で探る銀河の大局的磁場構造」
◆主な業種
(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(2) コンピュータ、情報通信機器
(3) 半導体・電子部品・デバイス
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) システムエンジニア
(3) 設計・開発
◆学んだことはどう生きる?
私たちの研究室では、主に、(1) 観測データを使った天の川の構造や、銀河の磁場構造や運動、銀河の進化など、銀河に関する研究、と、(2) 電波望遠鏡に搭載するデジタル バックエンドの開発、の2つに取り組んでいます。
前者に取り組んできた卒業生は、プログラムを書くことが多く、システムエンジニアなどとして就職する傾向があります。後者に取り組んできた卒業生は、情報通信機器や半導体関連の会社で開発等の仕事に就く傾向があります。
鹿児島大学のグループには、電波天文学の専門家が集まっており、日本の大学では最大規模です。国立天文台と共同で電波望遠鏡の運用を行なっており、学生が自ら運用に入っています。
南アフリカと西オースラリアに建設予定のセンチ波・メートル波電波干渉計SKA (Square Kilometre Array)の建設にも検討段階から協力しており、国際連携も盛んです。特にセンチ波・メートル波の電波天文学は日本では比較的新しい分野です。
宇宙電波が発見されたのは、今から約90年前のことでした。それ以来、急速に発展し、宇宙背景放射やパルサーの発見、間接的重力波放射の発見などノーベル賞に至る数多くの重要な発見がなされました。
科学技術が急速に発展したおかげで、現在、高校生でも手に入れられる材料で電波観測を行うことができます。手作りの電波望遠鏡で、天の川からの電波を観測してみてはいかがでしょうか。既に、トライしている高校生もいます。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? エネルギー工学、スマート農業 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス。合計で一年半近く暮らし、色々な点で、とても過ごしやすかったため。 |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? 吉田拓郎 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 天文部 |