
インターネットのシステムの構成を研究し、その管理や運用をより楽にしたい。吉川さんは、人間が四六時中管理していなくても、コンピュータが自分で問題を発見し、自分でそれを修正できるような自立したウェブシステムの研究・開発に取り組んでいます。
賢いレシピサイト!ーー「コンテキスト、つまり背景・文脈」を学ばせ、インターネット自ら異常を判断できるようにした!
私の会社では「毎日の料理を “楽しみ”にする」をモットーに、みなさんのお料理やお菓子のレシピを投稿・共有できるウェブサービスを展開しています。そのサービスが365日24時間スムーズに提供できるように、私たちは、サーバーが壊れたら直したり、不具合が出たら原因を突き止めたり、アクセスが集中してサーバーがダウンしたらサーバーを増やしたりと、頑張ってサービスの運用をしています。そこで、コンピュータが自立して仕事をこなしてくれることで、人間の負担を少しでも減らせるようなウェブシステムを開発したいと考え、研究しています。
ウェブシステムの運用は、異常がないか観測し、あれば修復するというのが基本です。例えば、これまではサーバーのCPU使用率の値が「異常」と判定されるのは、特定の値を超えたり、前の値から急激に変化したりした時でした。コンピュータはその値からしか「異常」か「正常」かを判断できませんでした。しかし、CPU使用率が上がるのは、何もサーバーに問題があるときだけではありません。例えばバレンタインのときは、アクセスが集中するので、CPU使用率が上がるのは当たり前のことで、むしろ「異常」ではなく「正常」です。

このような様々な状況(つまり背景や文脈。コンテキストといわれるもの)をコンピュータが考慮にいれて「異常」「正常」の判断を下すことができるように、様々なコンテキストをコンピュータに学習させることによって、それぞれの状況に応じた高度な異常検知を実現できるようにと研究してきました。
そのコンテキストを学ばせる方法は、異常が起きたとき、正常に戻すときにも有効です。プログラムのバージョンが変わっていて異常が起きていたら元に戻すとか、他の処理と競合していたら影響が出ない範囲で止めるとか、故障などで使えるサーバーの台数が急に減っていたらサーバーを増やすといったように、状況に応じて対処方法が決まるからです。したがって、様々なコンテキストをコンピュータにどんどん与えることによって、コンピュータが自立して、臨機応変な自己復旧をすることができるようにしようとしています。コンピュータが自立することで、人間の負担をどんどん軽減させられればと考えております。

岩田聡さんのコンテンツ(ほぼ日刊イトイ新聞)
岩田聡・糸井重里 対談まとめ
Nintendo の社長であり、日本でも非常に優れたゲームプログラマであった岩田聡さんと様々なゲームのキャッチコピーを考えたコピーライターの糸井重里さんの対談のまとめです。みなさんがプレイしているゲームや、その元となった構造をイチから作り上げたといっても過言ではない岩田聡さんが、どのような視点で何を行ってきたのか、というのがとてもよくわかる本当に面白い対談です。
仕事のあり方から、インターネットやオープンソースなどについてまで、高校生の方々でもわかるように、平易でわかりやすくかつとても印象的な言葉で綴られています。僕の研究や専門分野に直接の関係があるわけではないですが、世の中の技術者がどういう視点で働いているのか、オープンソースといった昨今の Web 企業にはなくてはならないコミュニティはどのようにして成立しているのか、みなさんがプレイしているゲームはどんな事に気をつけて作られているのか、など幅広い視点で学ぶことができます。
特に、「適切な大きさの問題さえ生まれれば。」という対談では、インターネットや、それを支えるオープンソースとその肝となる構造について、平易な文章でわかりやすく説明されており、また、それをどのように実際の仕事に活かしていくのかというところも書かれており、面白い文章となっています。
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知っておきたかったこと--- What You'll Wish You'd Known
Paul Graham, January 2005
有名なハッカーでありエッセイストであるポール・グレアムがまさに高校生に向けて書いたものです。高校の間に何をすればいいか、どういう考え方でいればいいのか、というのがハッカーの視点から書かれていて面白いです。
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