日頃からスマホの地図アプリを利用している人は多いと思います。人文学研究の分野でも、様々な情報をデジタルで地図に表した「GIS」(Geographical Information Systems)と呼ばれる情報システムが大活躍しています。これによって、山や川といった自然地理学的な配置に加え、土地利用、人口分布、施設配置などの人文地理学的な様々な情報を重ねて比較分析することができます。また、都市空間を3Dで映し出すこともできるのです。
私はこのGISを使った地理空間情報のデータベース化・可視化に取り組んでいます。例えば、京都の街並みの過去・現在・未来をバーチャルで再現し、インターネットを通して空間だけでなく、時間も超えた旅行ができる世界を作りたいと考えています。
地理情報システムを活用し、学問の垣根を越えた新たな研究へ
地図を使って様々な現象の空間的パターンやプロセスを理解する人文地理学は、個別の科学が目指す「専門知」よりも、それらを束ねる「総合知」を重視しています。歴史学、文学、美学などバラバラに研究されていた伝統的な人文学の研究対象をデジタル化し、GISを用いて、歴史学における時間次元と、地理学における空間次元を付加させることにより、学問の垣根を越えた新たな研究の可能性が広がります。個々の学問だけでは解明できなかった、新たな知の創造が可能になるのです。そのような学問分野としては、デジタル技術と人文学を融合させたデジタル人文学といった分野が世界中の大学で展開しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→地図会社(ゼンリン、昭文社)・GIS(ESRIジャパン)・測量関連(パスコ、国際航業)、旅行関連(JTB)、鉄道関連(JR東海、JR東日本)、公務員(京都市、大阪市)、教員(川崎市、大学)、研究職など
- ●主な職種は→企画、営業、調査、教育、研究など
分野はどう活かされる?
新たなGIS関連データやソフトの開発に活かされています。また、地理学は、地域の自然的・人文的・歴史的な様々な知識からなる総合知を獲得し、それらを立体的に用いることでの様々な企画・運営・意思決定を行うような仕事で活躍できます。
データに価値を与え、情報に変え、それらを総合的に重ね合わせることで、知に変えるのが面白い。地理学では、GISを用いて、情報を地図として可視化し、位置をベースに重ね合わすことができる。可視化された情報は、空間的パターン、そして空間的プロセスとして解釈可能である。「近いものは遠いものよりも関係がある」という地理学の第1法則は、地図を眺めることでより理解が深まる。
人文地理学、自然地理学、歴史地理学、都市地理学、観光地理学、地理情報科学など主要な地理学を教授する多くのスタッフが在籍する日本の屈指の地理学専攻・地域観光学専攻です。学部1回生から、世界標準のGISソフトであるArcGISを用いた実習が取り込まれ、日本有数のGIS教育・研究環境で思う存分GIS研究を行うことが可能です。
興味がわいたら~先生おすすめ本
地理院地図
国がこれまでに作成してきた様々な地図を一覧できるサイト。平面地図はもちろんのこと、3D地図への切り替えもでき、標高や活断層図、これまでの災害情報なども一目でわかる。白地図も掲載されており、研究活動にも役立つ。
(国土地理院)
HPへ
立命館大学アート・リサーチセンターHPの「データベース」
日本の様々な文化資源をデジタル化し、Web公開してしているサイト。浮世絵、古典籍、古地図などを、検索しながら閲覧できる。デジタル人文学を推進するための宝の山だ。