スポーツ科学

アスリートやチームが試合で実力を発揮するためのメンタルトレーニング研究


土屋裕睦 先生

大阪体育大学 体育学部 スポーツ教育学科 スポーツ心理・カウンセリングコース/スポーツ科学研究科 スポーツ科学専攻

どんなことを研究していますか?

スポーツ科学の分野の中に、スポーツ心理学があります。それはスポーツに関わる諸問題に心理学的側面からアプローチして、スポーツの実践や指導に科学的知識を提供する学問です。

やみくもに長時間練習をすれば勝てる時代は終わりました。選手の心技体に科学的にアプローチすることが大切です。プレッシャーのかかる試合で、選手が実力を十分に発揮するための心理的条件を探り、そのトレーニング方法を開発しています。また団体種目ではチームビルディングと呼ばれる手法を用いて、チームワーク向上に効果を上げています。現在、日本代表チームやプロスポーツ選手を対象に、彼らの心にアプローチする、メンタルトレーニングの実践に取り組んでいます。

メンタルトレーニングを取り入れたプログラムは日本代表チームにも有効

image

スポーツチームの試合での実力発揮に役立つ心理的サポートのあり方を探るために、5年間にわたって実証的に検討しました。研究の対象としたのはバスケ、アメフト、ラグビー、野球など様々な大学のスポーツチームです。その結果、スポーツチームに対する心理的サポートでは、個別のカウンセリングだけでなく、チーム全体への関わりが有効であることが明らかになりました。

その研究成果をもとに、メンタルトレーニングを取り入れたチームビルディングのプログラムを開発しました。強いチームを作るポイントは、メンバーのまとまり(集団凝集性)を高め「絆」を深めることと、やればできるという自信(集合的効力感)を高めることにありました。このプログラムは、大学選手権(インカレ)優勝を目指すチームだけでなく、世界大会での優勝を目指す日本代表チームにも提供され、その有効性が確かめられました。

アスリートのメンタルトレーニングの方法は、様々なストレスに悩む人々にも応用でき、広く社会にも役立てられると思います。

image

全日本インカレ7連覇を目指す女子ハンドボール部に対してメンタルトレーニング指導を行っています

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な職種は→体育教師、プロスポーツ選手、スポーツ関係団体職員、民間スポーツメーカー、心理サポートスタッフ、大学教員(研究職)
  • ●業務の特徴は→カウンセリングマインドを持った体育教師、科学的知識を持ったグッドコーチ(スポーツ指導者)等の専門職が多いです。
分野はどう活かされる?

体育教師、スポーツ指導者(コーチ)、心理サポートスタッフを経て、地域でのスポーツ振興やスポーツの価値を高める活動に関わる卒業生が増えています。

先生から、ひとこと

「たかがスポーツ、されどスポーツ」。トップアスリートの活躍は人々に勇気と希望を与え、また地域でのスポーツ参加は健康的なライフスタイルの確立に役立つはずです。このように、スポーツの価値は無限であり、今後ますます注目されるでしょう。スポーツ心理学は、人々の心に焦点をあて、スポーツの価値を掘り起こし、社会に発信する学問です。多くの皆さんに興味を持ってもらい、ともに学べることを希望しています。

先生の学部・学科はどんなとこ

大阪体育大学は、体育系大学初の心理・カウンセリングのコースを持つ大学で、スポーツ教育学科スポーツ心理・カウンセリングコースには、メンタルトレーニング指導の専門資格を持った教員等、6名が在籍し学生指導を行っています。また大学院を設置しており、「スポーツメンタルトレーニング指導士」資格取得のサポートや、博士後期課程において博士号取得まで学びを深めることができます。

image

第7回世界なぎなた選手権大会団体の部でチームワークを発揮して優勝した卒業生たちとの記念写真(ドイツ)

先生の研究に挑戦しよう

1)「あがりの予防」:プレッシャーのかかる大事な場面、例えば聴衆の前でのスピーチや大学入試、部活動の試合や発表会であがらないで実力を発揮するための方法について考えて実践してみましょう。(ヒント:リラクセーション技法、認知転換、イメージトレーニング)

2)「チームワーク向上」:集団で何かを達成しようとするとき、例えば文化祭での作品作りや部活動の試合や発表会で、メンバー間のチームワークを高めるために何をすればよいか考えて実践してみましょう。(ヒント:自己開示、目標設定、リーダーシップ)

興味がわいたら~先生おすすめ本

スポーツメンタルトレーニング教本

日本スポーツ心理学会:編

競技をする上で必要なメンタルトレーニングの具体例や理論的背景、実際の指導事例などが紹介されている。スポーツチームのチームワーク作りの具体的な方法としてソーシャルサポートの活用などが解説されていて興味深い。 (大修館書店)


よくわかるスポーツ心理学

中込四郎、伊藤豊彦、山本裕二:編著

競技者の性格やコーチの役割、動機づけの方法など、運動技能の向上のためには、スポーツ心理学の活用は欠かせないものとなっている。本書では、スポーツ心理学にまつわるトピックについて、コンパクトにわかりやすく記述されている。 (ミネルヴァ書房)


スラムダンクの心理学

辻秀一

高校バスケットボール部員「桜木花道」を主人公とした人気漫画『SLAM DUNK』(スラムダンク)のストーリーを、心理学の観点から解説したスポーツ心理学の古典的入門書。部活動に取り組む高校生にとって、時代は変わっても、学校生活を充実させるヒントが満載。 (集英社インターナショナル)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ