教育や健康づくりのみならず、地域の産業や観光、さらには国際政治や平和構築など、社会における様々な課題の解決にもスポーツの有用性が注目されてきています。そのための研究を行う新しい学問が、スポーツ国際開発学です。
鹿屋体育大学と筑波大学は、日本スポーツ振興センターとの協働で、大学院修士課程にスポーツ国際開発学共同専攻を設置し、スポーツを通して様々な課題解決に貢献できる人材の育成を目指しています。
子どもアスリートへの暴力・虐待・ハラスメントをなくせ
私は、スポーツを通しての地域開発について、歴史的、文化人類学的研究を行っています。例えば、各地域で行われている伝統綱引きや伝統打球戯などが、地域開発からみてどのような現代的な意義があるのか、現地調査などを行い考察しています。
鹿児島には、「ハマ」と呼ばれる木製の円盤を木の棒で打ち合う、江戸時代から続く伝統遊戯「薩摩のハマ投げ」があります。その振興のために、毎年大学開放事業として、保存会との共催で「学長杯破魔(ハマ)投げ大会」も開催しています。(写真1)
また、スポーツ分野における子どもアスリートへの暴力・虐待・ハラスメントを防止するために、イギリスの制度を参考にして、子どもアスリート保護制度の日本への導入・構築やスポーツにおける倫理的課題について共同研究を行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な職種は→高校教員、大学教員、地方公務員、研究職
分野はどう活かされる?
教員となった卒業生は、スポーツの歴史や意義、伝統武道について教授しています。また、地方公務員の場合は、専門性を活かして、地域におけるスポーツの振興に努めているようです。また、学会発表のスライド作りやポスター作りは、地方公務員となってからも、企画とそのプレゼンテーションを行う場面で役立ったようです。
共同専攻修士課程修了生のひとりは、本学博士後期課程に進学し、在学しながら本学特任研究員(スポーツ国際開発学共同専攻担当)に採用され、専門性を活かして活躍しています。
オリンピック・パラリンピック・ムーブメントの推進にともなって、人々のスポーツへの関心も高まっています。スポーツは、各時代、各社会において、人間にどのように関わり、どのような意味をもってきたのか―。スポーツの歴史を学ぶことを通して、多様化する現代社会におけるスポーツの効用と在り方について考察しています。