身体教育学

冒険教育から、入学直後のフレッシュマンキャンプ研究まで~野外教育の効果研究


林綾子 先生

びわこ成蹊スポーツ大学 スポーツ学部 スポーツ学科 野外・レクリエーションスポーツコース/スポーツ学研究科 スポーツ学専攻

どんなことを研究していますか?

「野外教育」というのは、自然の中での身体活動を通して、自分自身についての理解を深め、他者との関わり方を学び、自然と人との関係を理解し、積極的に生きる姿勢を育む教育実践分野です。特に冒険的な活動から深く自己の内面にアプローチする「冒険教育」と、人と自然との関係を考える「環境教育」という分野が重要です。子どもや青少年の心理的・身体的・社会的・環境的な成長についての効果測定や、野外教育の指導法に関わる研究などが行われています。

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私は野外教育を専門に、「初年次教育としてのフレッシュマンキャンプが大学適応に与える影響」というテーマでの研究を長年行っています。本学の特徴である野外スポーツ3大実習の一つである、大学入学直後のフレッシュマンキャンプにおいて、学生がどのような成長をするのか、どのように大学適応するか、調査しています。

これは、学力低下、学習意欲低下、退学率の上昇が問題となっている大学教育において、学生の学習意欲向上と学内での人間関係の構築に効果があることが示されており、今後のより充実した大学教育を考える上で意義が大きいと考えられます。

冒険は、多様性を理解し、コミュニティ形成する学びの場

また、最近のアウトドアブームを受け、野外活動の健康面での効果測定が求められています。そこで、私は、「登山のヘルスプロモーション」に関する研究をしています。登山活動の健康への効果、またどのように登山実践するとどういった身体影響が得られるかを明らかにします。より安全で効果的な登山や、アウトドアレジャーとしての普及に役立つでしょう。

「冒険教育における多様性」に関する研究も行っています。冒険教育のフィールドは多様性の理解・学習には非常に適した場です。人種や言語・文化の違う人たちと自然の恩恵を共有することは、人との関わり方・コミュニティ形成の学習として意義がありますし、国際化の時代に生きる若者の重要な学びとなるでしょう。

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アメリカロッキー山脈に遠征に行きました

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→スポーツ、教育分野
  • ●主な職種は→スポーツ指導者、教員
  • ●業務の特徴は→子どもたちにスポーツを通した教育実践を行う
分野はどう活かされる?

教員や指導者については、実際に人と関わること、共に目標を達成すること、環境との関わり方などを直接的に活かしているが、一般企業に就職した卒業生についても、より積極的に目標に向かって計画的に実践する力やコミュニケーション能力、社会性などが高く評価されています。

先生から、ひとこと

科学技術の向上に伴い、ますます直接的に体験する機会が減ってきています。直接的に人や自然と関わるからこそ得られるもの、そこには社会を豊かに、人生を楽しくさせるエッセンスが詰まっています。それを一緒に追求しましょう!

先生の学部・学科はどんなとこ

びわこ成蹊スポーツ大学は、野外スポーツ3大実習を全員に必修化している唯一の大学です。専門性については、より高度で独自の野外スポーツ実習・実践からの学びを深めることができます。

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琵琶湖でのカヤック研修

先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】
・人と自然との関係は昔から現在へどのように変化してきたか?
・自然体験の意義は?
・レジャーとしてのアウトドア活動の意義は?

興味がわいたら~先生おすすめ本

森林を生かした野外教育

飯田稔

アメリカから日本へ野外教育を伝え、その普及に努めた日本の「野外教育の父」である飯田稔氏。その考えや野外教育の意義、その実践についてわかりやすく述べられている。また、現代における直接体験・自然体験の重要性が理解できる。 (全林協)


野外教育の理論と実践

星野敏男、金子和正

野外活動や自然体験活動など、直接的な体験を通じて行われる教育が野外教育だ。本書は、基礎的知識・実践がわかりやすくまとめられている。これから野外教育の指導者を目指す人や、指導者になりたての人たちに向けて書かれているため、読みやすくもしっかりとした知識が得られる。 (自然体験活動研究会:編/杏林書院)


センス・オブ・ワンダー

レイチェル・カーソン

海洋生物学者である著者は、化学物質による環境や生態系への影響に警鐘を鳴らし続けている。この本は、子どもとともに自然探索をしながら見つけた、人や生物にとって必要なもの・ことを美しい文章で表現している。環境教育の発展に大きな影響を与えた本。 (上遠恵子:訳/新潮社)


自然と国家と人間と

野口健

世界七大陸最高峰を制覇したアルピニストである著者は、登山途中に人間による自然破壊の現実を目の当たりにしてしまったことをきっかけに、環境保全活動に本格的に乗り出す。人格形成過程に考えてほしい内容が書かれているのでぜひ読んでみて欲しい。 (日本経済新聞出版社)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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