生物多様性・分類

画像解析で、様々な動物の形態と機能に迫る


佐々木基樹 先生

帯広畜産大学 畜産学部 共同獣医学課程/畜産学研究科 畜産科学専攻 動物医科学コース

どんなことを研究していますか?

一般に鳥類の足には、4つの趾(あしゆび)があり、そのうち3つは前方に、残る1つは後方に向いていて、この状態で物をつかむのが一般的です。ところがフクロウやミサゴの場合、前方のあしゆびの1つを後ろに動かし、あしゆびを前に2つ・後ろに2つ配置するといった技を持っています。しかしこの可動性の詳細は知られていませんでした。

私はフクロウやミサゴのあしゆびをCT画像解析することによって、これらの鳥類が物をつかむときのあしゆびの可動性や可動範囲を明らかにしました。また、電子顕微鏡を用いてペンギンの羽を微細に観察し、ペンギンが潜水遊泳する際に使う羽の機能形態学的特徴を明らかにしたりもしています。

動物のおかれた環境と形態・機能から見える多様性

私は、鳥類のほかにも、クマ科動物、霊長類、鯨類、有袋類、そしてアザラシやトドといった鰭脚類などの哺乳類を中心に、これらの動物の様々な体の部位のCT画像解析を行い、骨格の形態的特徴を解析しています。

多くの動物は周囲の環境や生態に合わせて形態的に適応進化してきたと考えられ、動物が持つ体の機能形態的特徴と動物のおかれた環境やその生態との関係を今後の研究において明らかにしていきたいと考えています。

動物の体は形態的に多様性を持っており、分類群を加味しながら、その形の意義を考えていくのは「生物多様性・分類」分野の一つの研究領域であると考えています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→公務員、大動物臨床、小動物臨床、動物園・水族館
  • ●主な職種は→獣医師
  • ●業務の特徴は→動物の治療、啓蒙
分野はどう活かされる?

動物園・水族館獣医師などでは飼育動物の治療以外に、動物の系統分類学的位置、形や機能、さらに習性に関する内容の社会啓蒙を行っており、またそれらの知識は動物園施設設計などにも生かされています。

先生から、ひとこと

地球上では多くの動物が様々な生態環境に生息しています。それら動物の体の形にはまだまだ知られていない意味が隠されています。その形の意味をひも解いてみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

帯広畜産大学畜産学部では、共同獣医学課程(6年制)においては、家畜、野生動物を含めた様々な脊椎動物の形態を詳細に学ぶことが可能であり、形態学的な側面から脊椎動物の多様性を学ぶことが可能です。また、畜産科学課程(4年制)では、遺伝的な観点からほ乳類を中心とした生物の多様性や分類学を学ぶことができます。

先生の研究に挑戦しよう

・博物館等で動物の骨格標本を観察し、その動物の形態的特徴と生態や生息環境を比較検討することで、形態学的な環境適応や適応進化を考察してみましょう。

・動物園や水族館で動物の動きを観察し、同時に本や論文、そして博物館などでその動物の骨格形態を把握することによって、動きのメカニズムを考察してみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

新図説 動物の起源と進化 書きかえられた系統樹

長谷川政美

哺乳類、鳥類、爬虫類の系統分類に関して、最新の情報を写真とともにわかりやすく紹介してあり、最新の系統分類の情報を知る上ではとても役立つ。「生物多様性・分類」という学問のまさに分類という部分で、最新の情報を提供している。主に哺乳類の系統樹を写真入りで示してあり、初めてこの学問領域に触れる学生にとっても理解しやすい構成となっている。近縁な、または同じ分類群において生物が形態的多様性を持っていることがよく理解できる内容である。 (八坂書房)


哺乳類の進化

遠藤秀紀

哺乳類とは生まれてきた子供を乳で育てる脊椎動物であり、単孔類以外の哺乳類では子供は母親の胎内(胎盤内)で育ち、そして生まれてくる。約2億年前、恐竜の時代以降、原生哺乳類はどんな進化をたどったか。この本は、哺乳類の進化に関して、その形態と合わせて解説されており、またさまざまな哺乳類の機能形態に関しても報告がなされている。 (東京大学出版会)


脊椎動物の多様性と系統

松井正文:編

脊椎動物は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の5類からなり、からだの中に骨や軟骨でできた骨格を持つグループ。魚類から哺乳類にかけて、脊椎動物の系統進化と形態に関してわかりやすくまとめられており、脊椎動物の進化と多様性を理解する上ではとても良い本である。 (裳華房)


獣医学・応用動物科学系学生のための 野生動物学

村田浩一、坪田敏男:編

この本は、野生動物学を学ぶ最適の1冊。自然界や動物園・水族館で飼育されている野生動物に関する様々な記載がなされている。特に第2章の「野生動物の系統進化と分類(帯広畜産大学佐々木基樹先生ほか著)」で、「生物多様性・分類」という学問分野の概略を把握することができる。 (文永堂出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ