進化生物学

ウニ・ヒトデ・クモヒトデを用いた進化発生学の研究


北沢千里 先生

山口大学 教育学部 学校教育教員養成課程 理科教育選修

どんなことを研究していますか?

ウニやヒトデ、クモヒトデなどの棘皮動物を用いて、卵→胚→幼生→成体へと発生が進む中、どのように体軸が形成され、維持されていくか、幼生と成体との違いは何かといったことを明らかにしようと研究を進めています。棘皮動物は、我々脊椎動物と姉妹群をなすことから、棘皮動物でみられる現象を解明すると、脊椎動物の理解につながるかもしれません。ヒトデやクモヒトデはいうまでもなく、ウニの幼生も非常に高い再生能を持つことも注目のポイントの一つです。また、これらの研究から得られた基礎的な知見は、現代の様々な医療や技術に何らかのヒントを与える可能性を秘めています。

教科書にでてこない多様なウニの発生

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高校で必ずウニの発生を学びますが、様々な種を比較すると、教科書とはかけ離れた特性が続々と出てきます。例えば、胞胚はつるつるの球状と考えがちですが、しわくちゃの状態を経るもの、幼生が成体原基を作るのは発生後期と記されていますが、もっと初期から作られるもの、幼生は餌を食べるものばかりではなく食べずに成体に変態するものなど、かなり多様です。その特徴が現れる機構やなぜこのような違いが生じるのかを、顕微手術や薬品操作を組み合わせて解析しています。これらの結果から、生物がどのように環境に適応したかを考察することで、生物の進化を追及できるでしょう。

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実験で使用する生物は自分の手で採集します。大潮の日に海に出かけては、干潮の合間の1時間必死に歩き回って、材料を採集します。お目当ての材料と出会えない日もありますが、この日は巨大なコシダカウニに出会えて目が点になっています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な職種は→小・中・高等学校の教員、企業の研究員
分野はどう活かされる?

理科(高等学校では生物を中心とした理科)分野の教育に携わっています。また、部活動などの課外活動においても、生物分野の研究を中・高の生徒さんたちと行っています。さらに、研究に面白さを感じた卒業生の中には、企業での研究に携わっている人もいます。

先生から、ひとこと

進化生物学は、様々な生物がどのように進化してきたかを考える学問分野です。近年では、Eco-Evo-Devoといった、生態学的(Ecology)・進化学的(Evolution)・発生生物学的(Development)に、生物の進化を総合的に捉えようという流れがあります。なぜなら、「進化」は、タイムマシンがない限り、過去にさかのぼって、それぞれの生物に生じた現象を実際に目で確かめることができません。そのため、現存の生物が持つ特徴や、それらが見せる生命現象がどのような原因により生じているかを、網羅的に調べ、生物間で比較することから、進化の道筋をたどるといった研究方法をとります。我々ヒトも、一つの生物であり、そのルーツをたどるこの分野は非常にロマンがあふれています。

先生の学部・学科はどんなとこ

山口大学は、日本海・瀬戸海に面した非常に海洋環境に恵まれた山口県にあります。本大学には、微生物から植物、大型動物まで幅広く生物を用いた研究がなされ、多様な分野から生物進化を考える上で、刺激的な大学と言えます。

その中で、私の研究室は本大学内でも地元の海産動物を用いた進化多様性の研究を行っている唯一の研究室です。ウニ、ヒトデ、クモヒトデ、ナマコおよびウミユリといった棘皮動物を、地元の海で採集して研究室で飼育し、そして、その発生過程において顕微手術や薬剤処理、さらには分子生物学的手法を駆使して様々な特性を解析しています。私の所属している教育学部では、基本的に卒業研究のみで卒業する学生さんがほとんどですが、1年間で完結できるテーマを積み重ねていくことで、当該分野の専門誌に掲載されるレベルとなりえます。

また、多くの学生さんが教員を目指すことから、学校現場でも活用できる手法、例えば、顕微鏡観察法や写真撮影などから微細手術などまで、徹底的に身につけ、将来の生物学を支えるであろう子どもたちに生物進化の面白さを伝えられるよう指導しています。一方、大学院に進学したり、企業での研究職を目指したりする学生もいますので、どこに行っても通用する研究の姿勢が身につくよう指導をしています。

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数年前に山口大学で棘皮動物研究集会を開催した時の、緊張しながら開会宣言を行っている姿です。全国から棘皮動物を研究し、棘皮動物を愛する研究者たちが1年に1度集まります。

先生の研究に挑戦しよう

身近に生息する生物を用いた地域変異や形態的特徴をまとめ、各地での違いを網羅します。また、その発生過程を追跡し、関心のある薬剤などの影響を種間で比較してみましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

理科好きな子に育つ ふしぎのお話365 見てみよう、やってみよう、さわってみよう 体験型読み聞かせブック

自然史学連合会:監修

身近な自然現象のトピックスが365日分。生物の多様性を幅広く知ることができ、自然への幅広い関心を高める第一歩としては、非常にとっつきやすい。子ども向けの本ではあるが、自分自身で実験したり、確かめることのできるポイントも記載されているため、これをきっかけに自身の関心を発展させることも可能だろう。例えばウニ類の裸殻の特徴に関する内容では、形態的特徴をとらえることで、種間およびグループ間の体制を考えることができ、そこから進化多様性を考えることが可能となる。 (誠文堂新光社)


進化とはなんだろうか

長谷川眞理子

著者は人類学者。進化生物学の観点から人間の行動性向を理解しようとする進化心理学に関する著書が多い。進化心理学とは、ヒトの心理メカニズムの多くは生物学的適応であると仮定し、ヒトの心理を研究するアプローチのことだ。特に性にまつわる問題への関心が高く、この本でもオス・メスの性差の意味、配偶をめぐる競争などを書いている。生物がどのように進化してきたかについて、様々な具体例とともに、そのメカニズムについてわかりやすく記載されている。 (岩波ジュニア新書)


図解雑学 進化論

中原英臣

19世紀半ばのダーウィンの進化論から始まり、ラマルク進化論、日本の今西錦司進化論、ドーキンスの利己的遺伝子説などこれまで登場した歴代の進化論の1つ1つのトピックスについて、見開きごとに文章と図とともにわかりやすく解説してある。また、現代において提案されている進化論についても、幅広く記載されている。 (ナツメ社)


スポンジ・ボブ

「スポンジ・ボブ」(原題:SpongeBob SquarePants)は、アメリカのテレビアニメ。架空の海底都市「ビキニタウン」を舞台にスポンジ・ボブと仲間達が巻き起こすギャグアニメ。原作者はデューク大学生物学部を卒業したこともあって、要所要所で海産動物の特性やその進化過程をも垣間見ることのできる作品だ。日本でも時折Eテレで放送されている。アマゾンのプライムビデオが出ている。 (ステファン・ヒーレンバーグ:原作)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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