進化生物学

タンパク質の性質を調べる進化実験を行う、最先端の進化生物学研究!


高野和文 先生

京都府立大学 生命環境学部 生命分子化学科/生命環境科学研究科 応用生命科学専攻

どんなことを研究していますか?

生物がどのように進化してきたか調べるのが進化生物学です。では進化の根っこにはどんな生物がいたのか。生物の進化系統樹では、最初にまず古細菌と真正細菌が枝分かれし、古細菌からヒトなどの原核生物が生まれたことが知られています。この進化の流れを遺伝子とタンパク質の性質を調べ明らかにする新しい進化生物学の方法の1つに、微生物を用いた進化実験という方法があります。私は古細菌と真正細菌を対象に、タンパク質の進化実験に取り組んでいます。

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タンパク質は、その遺伝子の変異によって直接影響を受けます。変異とタンパク質の性質の関係を調べることで、最も簡単な進化モデルの実験を行うことができます。とくに私たちはタンパク質の進化におけるタンパク質の安定性の役割を調べています。進化の過程でタンパク質の機能を向上させ、新たな機能を持ち変わっていくためには、タンパク質自身の安定性が重要ではないかと考え、実験で実証しようとしています。

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研究室での実験の様子

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→医療、製薬、食品、公務員など
  • ●主な職種は→研究開発、製造管理など
分野はどう活かされる?

企業では、医療機器や新薬、加工食品の開発とそれらの製造管理。公務員は、主に水道や環境関係で、分析や管理に従事しています。私の研究分野は基礎系ですので、直接社会で技術を生かすというものではありません。研究での、問題を見出し、その解決法を考え、実験し、その結果の分析から問題の解決を図るという一連の活動を通して、社会における様々な問題解決を行える人材の育成を行っています。

先生の学部・学科はどんなとこ

生命環境学部生命分子化学科は、「化学」を基盤として生命科学を学び、生命現象の解明、医薬品開発、機能性材料の創成、地球環境の保全といった社会の要請に応える人材を育てる学科です。研究室レベルで「生命分子化学」を掲げている大学はありますが、学科としての「生命分子化学科」は、京都府立大学にしかありません。「生命分子化学」を総合的に学ぶことができるところです。

本学科の教育における特色は、少数精鋭の教育、実験科目の重視、厳しい学力評価などです。忙しく・厳しいと言われているところですが、入学後もいっそうの勉学意欲と向上心を持ち続け、充実した学生生活を送りたい方におすすめです。「進化生物学」に取り組んでいるのは私の研究室だけで、タンパク質を用いた進化実験を行っており、「進化」を直接実験で実証し、理解することに挑んでいます。

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培養実験の様子

先生の研究に挑戦しよう

・大腸菌の進化実験
大腸菌を例えば高温や低温にいきなり持っていった場合と、継代培養しながら徐々にそれらの環境に持っていった場合では、その挙動は異なります。こういった環境適応の際に、大腸菌内で何が起こっているのかを調べてみましょう。これまでどういった実験で何がわかっているのか、どういった環境への適応を調べるのがよいのか、また検出はどういった技術を用いるのか等、検討すべきことはいろいろありますが、そういった検討するところから研究というものを体験できます。

興味がわいたら~先生おすすめ本

ネムリユスリカのふしぎな世界 この昆虫は、なぜ「生き返る」ことができるのか?

黄川田隆洋

ネムリユスリカの幼虫は、乾燥状態で死にそうになっても、次の雨が降ると蘇生するという特徴を持っている! この本は、ネムリユスリカという不死身の昆虫に関する研究の話が書かれている。著者の所属する農業生物資源研究所は世界で唯一、ネムリユスリカ研究を行うという。極限環境でも生存し続けるこの昆虫を知れば、生物の進化やタンパク質の特徴についても考えることができるだろう。 (ウェッジ選書)


眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く

アンドルー・H.ノール

カンブリア紀大進化とは、約5億4200万年前から始まる古生代カンブリア紀、そこから1000万年ほどの短期間に突如として、今日見られる動物が出そろった現象のこと。カンブリア大爆発と呼ばれることもある。その証拠はカンブリア以前の地層から見つからない動物化石が見つかることだ。それはダーウィン以来進化学の最大の謎だった。生物はなぜ、突然、爆発的に進化したのか? この本は、そのカギは「眼」の進化によって説明できるのでないかとナゾに迫っていく。 (渡辺政隆、今西康子:訳/草思社)


生命 最初の30億年 地球に刻まれた進化の足跡

アンドルー・H.ノール

地球が誕生してから6億年ほど経った頃の約40億年前、海で生命が誕生したといわれている。生命はそれからゆるやかな進化を経て、約5億年前のカンブリア紀、カンブリア大爆発と呼ばれる大進化によって、今日の地球上で見る動物群が出現したとされる。それ以降の調査研究は盛んでよくわかってきているが、生命誕生の最初の30億年あまりは空白期間と言われた。この本は、地球生命史40億年の中で、あまり明らかにされていない生命最初の30億年で何が起こっていたのかについて述べている。 (斉藤隆央:訳/紀伊國屋書店)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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