原子力発電所の原子炉の燃料は、二酸化ウランを使っています。二酸化ウランは、ペレットと呼ばれる直径1cm、高さ1cmのほどの円柱状に焼き固められたあと、ジルコニウム合金の被覆管と呼ばれるさやに1本あたり400個ほど詰められます。これが事故の報道でよく耳にした燃料棒です。燃料ペレット1個分のエネルギー量は、一家庭の6~8か月分の電力量にあたると言われます。被覆管(燃料棒)は数十~二百数十本ずつ直方体に束ねられ、燃料集合体にします。それが炉心に挿入され、原子力発電所は運転を始めます。
水素爆発につながらない水素を発生しない燃料を
私の専門の核燃料工学では、核燃料を含む被覆管が原子炉運転中にどのような変化をするか材料科学的に評価、予測し、燃料の寿命まで被覆管が壊れて、燃料がもれないようにすることが目的です。私はとりわけ、より長寿命まで壊れない新しい燃料を開発する研究をしてきました。その結果、ウラン資源を節約し、廃棄物を減らすことができます。また最近では、福島第一原子力発電所の中で溶けた燃料を取り出すために、燃料や被覆管が高温で溶けたらどうなるかといった研究、さらには、事故が起こったとしても、水素爆発の原因となる水素を発生しない新しい燃料の研究を行っています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→核燃料工場、核燃料検査会社、国立研究機関
- ●主な職種は→研究員、検査技師
- ●業務の特徴は→特殊な施設で核燃料や放射性物質を遠隔で操作することがあります。
分野はどう活かされる?
核燃料の開発・検査会社で、ウランを見、聞き、触った経験を活かして、原子力発電所で使用した燃料の検査などを行っています。
原子力は複合領域なので、福井大学では、燃料の健全性に関わる核燃料工学だけでなく、構造材の健全性の原子炉材料学、中性子の数を把握する炉物理、熱の取り出しのための熱水力学、放射線と物質や人体との相互作用の放射線化学・生物学、その他廃止措置工学、原子力防災、耐地震・津波などを研究・教育しています。高校で物理、化学、数学、生物、地学のどれか1つでも好きだった高校生も、大学で原子力以外を学んだ大学生も、これから原子力を学ぶことが可能です。
原子力は複合領域で、様々な分野の学問から成り立っています。その中でも福井大学では、福井県嶺南にある企業や研究機関と連携し、その様々な施設を活用しながら、核燃料を始めとする従来の原子力工学に加え、耐震・耐津波、防災、廃止措置等、地域に根ざしたより安全な原子力システムの構築を目指した研究・教育を行っています。