化工物性・移動操作・単位操作

革新的ナノ炭素材料の創出とその応用展開


孔昌一 先生

静岡大学 工学部 化学バイオ工学科 環境応用化学コース/総合科学技術研究科 工学専攻 化学バイオ工学コース

どんなことを研究していますか?

ナノ炭素材料は多くの優れた特性を有しており、今までにない革新的な省エネルギーや環境負荷の少ない機能などを生み出すことが期待され、電子・工学、環境・エネルギー、生物・医学などの多様な分野において、現在盛んに研究されています。

21世紀の新素材として最も期待される材料の一つにグラフェンがあります。ナノ炭素材料であるグラフェンは厚みが炭素原子一個分しかないユニークな二次元シートです。グラフェンは、電気伝導、熱伝導、光透過、機械的強度、柔軟および安定性に優れています。そのため、フォトニクス、オプトエレクトロニクス、センサーなどに加え、エネルギーの生成と貯蔵といった幅広い応用に期待され、次世代革新材料として大きな注目を集めています。

注目のナノ炭素材料グラフェン

私が特に追究しているテーマは、ナノ炭素材料としてもっとも注目されているグラフェンや還元型酸化グラフェンの量産法の開発です。地球上に資源量が豊富な黒鉛を酸化させ、まず酸化黒鉛を作ります。酸化黒鉛を攪拌や超音波処理などにより簡単に剥離して酸化グラフェンを作ることができます。これを還元(熱的・化学的)処理すると、還元型酸化グラフェン(酸素官能基が少し残り、親水性)やグラフェン(酸素官能基を完全に除去、疎水性)になります。

その応用展開には、まず、プラスチックなどの基板上にグラフェンを用いた高品質な導電膜を作りたいです。また、ポリマーや金属化合物との複合することにより、次世代全固体イオン電池用の電解質の創出も試みます。

これ以外にもセンサー、ガスバリア、水素貯蔵などと、実に幅広い応用が考えられるため、将来的は実用化を狙い、グラフェンやその複合材料創製技術を企業へ提供したいと考えています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製品製造業
  • ●主な職種は→専門的・技術的職業
  • ●業務の特徴は→新商品研究・開発
分野はどう活かされる?

環境に優しいもの作り、最先端技術の研究開発に活かされています。

先生の研究に挑戦しよう

各種有機溶媒中での黒鉛の分散性、黒鉛の酸化による酸化黒鉛の創製(黒鉛に各種酸化剤を用いて酸化反応)、酸化黒鉛から酸化グラフェンの創製(撹拌や超音波処理)、また、各種有機溶媒中における酸化グラフェンの分散性、マイクロ波処理や超臨界処理により酸化グラフェンから還元型酸化グラフェンとグラフェンの創製、さらに、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェンを用いポリマーおよび金属化合物との複合により革新的高機能複合材料の創出などが、考えられます。お勧めする本を参考にしてみてください。

興味がわいたら~先生おすすめ本

グラフェンが拓く材料の新領域 物性・作製法から実用化まで

グラフェンの基礎物性から作製法術まで、現状と課題まで幅広く詳しく紹介されており、グラフェンがどのようなものなのかがわかるため、初学者に役立つだろう。 (エヌ・ティー・エス)


超臨界流体入門

化学工学会超臨界流体部会:編

超臨界流体の教科書。環境に優しい超臨界流体技術について学習し始めるのに適切。超臨界流体とは何かから始まり、基礎知識はもちろんのこと、最近の研究動向やクロマトグラフィー、反応、材料製造、装置などの各分野での実用例などを解説している。 (丸善出版)


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