私の研究テーマは、紀元前1世紀頃の古代ローマ時代に書かれた、世界最古の建築書と呼ばれるウィトルウィウスの『建築十書』(ラテン語)読解と、これを初めて日本語に訳した森田慶一(元京都大学)やそれを現代に継承展開した増田友也(元京都大学)の歴史的意義(建築論の京都学派)を追求することです。グローバル化する現代建築を学ぶ者にとって基本的な知識と言えるでしょう。
なお、森田と増田が中心となって創り出した建築学の一専門分野「建築論theory of architecture」は、現在「建築史・意匠」の学問領域を構成する一分野として位置づけられています。若い学生の皆さんにもぜひ興味を持ってほしいと願っています。
森田慶一と増田友也の建築論研究と北陸・福井への地域的展開
ウィトルウィウスによる建築の古典書から得られる知見は、現代建築をめぐる多様な動向やあり方を見直し、根本的な問題を考える上で重要な示唆を与えてくれると考えています。また「建築architecture」は「芸術」なのか「工学」なのか、多様な「建築論」的議論が、大正・昭和期から現代に至るまで、森田慶一や増田友也を中心にして京都大学を知の拠点として広く展開しました。
さらにこの建築論研究が、北陸・福井へと地域的に広がって、福井工業大学・福井大学などが新たな拠点となって活発化しています。大都市圏だけでなく地方都市での特色ある建築動向を、学生の皆さんにもぜひ知ってほしいと思います。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→建築業
- ●主な職種は→設計士、コンサルタント技術者、公務員、教員・研究者など
分野はどう活かされる?
現代建築の計画・設計にあたり、例えば家族関係と住まい、高齢者の介護生活と看取り、学校での人間形成と教育空間、町並み・景観・風景の問題などをめぐって、建築論的な視点を生かした基本的な知識は、今後ますます必要になると思います。さらに建築家とはどのような立場なのか、そもそも建築とは何なのかという問題は、グルーバル世界における日本社会において避けられない根本的な課題です。これまでに建築の広い職種・業務において、建築論的な知識を生かして働いている卒業生が数多くいます。これからもっと増えてほしいと願っています。
「建築」あるいは「建築論」の仕事は、ひとを思いやり幸せを導くとともに、自分自身を深く見つめて創り上げていくことが基本でなければなりません。少しでも興味を持ってくれる方がいれば、遠慮なくご連絡ください。メールアドレス hidei@fukui-ut.ac.jp
「すべてを学生のために」を大学の基本理念としており、学生と教員の距離が近く、その学生に寄り添った教育・研究指導が行われています。市川研究室では、学生の訪問を歓迎しており、新入生から大学院生・社会人OBまで、日々幅広く交流しています。