日本建築史のうち主に住宅史を専門としています。住宅を考えるには、平面や意匠だけではなく、人がそこでどのように暮らしていたのか、「生活」「行為」「意識」との関わりが重要であり、それを日記などの記録や絵画史料、建物に残る痕跡から解き明かそうとしています。例えば、かつては一般的だった古家の移築利用や木材の再利用が衰退した時期や理由を知ることで、今後住宅資材のリユースを進める上での課題を発見できます。
建築史学の成果を活かしたプロジェクトが増える
近年は、歴史的建造物の保存活用や、歴史的景観を活かすまちづくりなど、建築史学の成果を活かしたプロジェクトが増えています。身近な歴史的建造物の価値を、意匠・技術・社会背景など広い視点から捉え、それを地域に還元することが、歴史ある建物を後世に伝え、活かしていくこと、町の個性を創出することに繋がります。このため、各地の歴史的建造物の調査や復原に携わるほか、歴史的建造物を核としたまちづくりや景観計画にも協力しています。
また、過去の歴史的な災害の被害状況を調べることが、今後の防災計画の策定に寄与するなど、建築史学の重要性が増しています。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→建設業(ゼネコン、住宅メーカー、インテリア)、都市計画コンサルタント
- ●主な職種は→設計、調査企画、施工管理
分野はどう活かされる?
伝統木造を主とする建設会社のほか、地方公務員として働いている卒業生は、建築職として、歴史的資産を活かしたまちづくりに従事しています。都市計画コンサルタントや設計事務所では、町の個性を形成する要素を専門的な視野で見いだし、計画につなげる調査や企画に従事しています。これらの仕事において、調査方法や視点が大学での研究と直結しているようです。
「建築史」の役割は、「現在」の建築の位置づけを「過去」から問い直し、正しく把握することにあります。現代に残された手掛かりを繋ぎ合わせて、「過去」の人々の生活や建築の姿を明らかにしていく過程は、推理小説のような醍醐味があります。建築技術・材料などの理系の領域に加え、美術史・史学・社会学など文系分野との関わりも深く、幅広い視野を培うことができる点も魅力です。
東海大学工学部建築学科は、建築史教員3名を有し、日本・西洋の両地域、時代的にも古代から近現代までをカバーする、恵まれた研究体制にあります。大学全体でTo-Collabo Projectという周辺地域との連携プログラムに取り組み、学生・教員は授業や学生活動を通して地域の魅力発見・向上に協力しており、私自身も歴史的建造物の保存やまちづくりに尽力しています。