すでに実用化されている太陽電池やICチップに使われているのは、シリコンという石に多く含まれている固い無機材料です。これを使って、研究が盛んに行われていますが、シリコンに替わる電気材料として期待されるものの1つが、有機半導体です。その特色は、ペンキのように塗るだけで太陽電池やトランジスタの機能を発揮し、しかもぐにゃぐにゃと曲げられるというものです。時々マスコミでも「塗るだけでビルの壁一面を太陽電池にできる」といったフレーズで紹介されます。
どんな色の光を当てれば、たくさん電流が得られるか
電子・電気材料工学の分野のなかで、私は有機エレクトロニクスを専門にしています。一番力を入れているのは、有機薄膜太陽電池です。炭素を含む化合物を有機化合物と呼びますが、そういった物質に電気を流したり、発光や発電をさせようとしたりします。環境にやさしめで、しかも安価な材料を使って、そこそこ性能のいい有機薄膜太陽電池が作れないかという地味な研究です。
最近は、ある太陽電池に、どのような色の光を当てれば一番たくさん電流が取り出せるかということを調べる簡単な装置の開発にも取り組んでいます。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→電気関係のメーカーや電気設備関係が多いです
- ●主な職種は→技術者や技術営業が多いようです
分野はどう活かされる?
「電子・電気材料」というピンポイントで直接仕事に結びつくということは、どうもないようですが、電気工学関係の学科の卒業者の特徴は、電気だけでなく、機械や化学といった他の分野の業界でも必要とされる人材となるため、卒業生も様々な分野で活躍しています。
今ある便利な携帯電話や大型ディスプレイ、電気自動車などは、電子・電気材料工学の発展がなければ存在しませんでした。未来の世界がどうなるかも、この分野の発展によるところが大きいでしょう。この魅力的な学問分野に、ぜひ関心を持ってもらえればと思います。
兵庫県立大学工学部電気電子情報工学科には、無機物から有機物まで関心を持つ、幅広い電子・電気材料工学分野の研究者が在籍しています。この学科では、情報技術やエネルギーなど、電気電子情報工学分野で活躍するために必要なスキルを身につけてもらうべく、公立大学ならではの、こまやかな教育を行っています。現在、姫路工学キャンパスでは建て替えが進行中ですので、きれいな環境での勉学・研究を楽しんでもらえるはずです。
興味がわいたら~先生おすすめ本
天野先生の「青色LEDの世界」 光る原理から最先端応用技術まで
天野浩、福田大展
ノーベル賞受賞者の天野先生自身の言葉で研究内容が語られており、大変面白い。広くいきわたり、存在することが当たり前となった発明にも、それを達成するまでには様々なドラマがある。そして、そのドラマは準備を怠らなかった人のもとにしか訪れないということをわかってほしい。「電子・電気材料」と言うと、用途に適した素材がまずあり、その上で研究をする、という印象を持つかも知れない。もちろんそのような研究も重要で、発表される研究論文の数も多いが、この分野の画期的な成果は、ターゲットとなる現象を実現するために素材を作り上げるところから生み出される。そうしたこともわかる本だ。 (ブルーバックス)