太陽光発電は再生可能エネルギーの切り札として期待されています。しかし依然として発電コストが高いことに加え、発電のための変換効率の課題があります。これまでの太陽電池は、可視光などの狭い波長領域の光しか利用できないために、変換効率は20数%です。しかし幅広い波長の光を使えるようになれば、2倍~3倍の高効率を実現できる可能性があります。私たちはテルル化亜鉛という化合物をおもな材料にしたマルチバンド太陽電池というものを研究しています。この新しい太陽電池は、太陽光に含まれる赤外線、可視光線、紫外線を幅広く吸収できます。超高効率を実現できる可能性を秘め、次世代の太陽電池として期待されます。
私たちの研究室では、光と半導体をキーワードに、エネルギー問題、環境問題の解決に資する光デバイスの開発に取り組んでいます。特に最近は、前述のマルチバンド太陽電池など超高効率・低コストの次世代太陽電池の開発をテーマにし、発電コストの飛躍的な低減を目指しています。さらに、蓄電池などとの組み合わせによる安定電源化を図り、将来にわたって枯渇することのないエネルギー源として太陽光発電を確立することを目指しています。また、これらの実現に向け、アメリカなど海外の研究機関と積極的に共同研究を行っています。
赤色・青色に比べて発光効率が極端に低い緑色発光ダイオードの高効率化
また、私たちの開発したテルル化亜鉛系材料の新しい半導体を用い、純緑色発光ダイオードを作り出す研究開発も行っています。緑色発光ダイオードは、赤色・青色に比べて発光効率が極端に低いため、緑色領域の発光ダイオードの高効率化を目指しています。この波長領域はグリーンギャップとも呼ばれ、早急な発光効率の向上と、さらにはレーザーダイオードの実現が期待されています。私たちは、新たな半導体を用いることで高効率緑色発光ダイオードを実現しようとしています。高効率化が実現すると、より省エネルギーで、赤色・青色と組み合わせた白色光源が実現できます。また、緑色レーザーダイオードが実現できれば、超小型プロジェクターなど従来ない製品の開発につながります。
一般的な傾向は?
- ●主な業種は→電気電子関連製造業、自動車・船舶製造業、情報通信業、電力会社など
- ●主な職種は→研究、開発、設計など
- ●業務の特徴は→電気電子の知識を生かした研究開発、応用製品開発など
分野はどう活かされる?
電気は社会インフラとして生活に不可欠であるのはもちろんのこと、現代社会の多くのモノは電気電子工学の高い技術を利用して作られています。このことから電気電子工学を学んだ学生に対する産業界の期待は非常に大きく、他の工学分野に比べて毎年高い求人倍率を維持しています。卒業生の就職率は毎年ほぼ100%で、その多くは電気電子・情報通信関連の製品や部品、製造装置等の企業や、自動車あるいは自動車部品の製造企業、造船、化学系プラント、電力会社など、電気電子工学の知識を生かすことができる幅広い分野で活躍しています。
電気電子工学の分野は、これから到来するといわれる超スマート社会(Society5.0)においても欠くことのできない中心的な役割を果たす学問分野です。高校までの授業では電気電子工学はイメージしづらいかもしれませんが、世の中の電気で動いているものすべてに電気電子工学の技術が詰め込まれていますので、調べてみてください。これからも世界の主役を担う電気電子工学の分野にぜひ興味を持っていただいて、一人でも多くの皆さんがこの分野に進んでくれることを期待しています。
理工学部理工学科では、1年次後学期からコース類に配属された後、2年次から12の各コースに配属するという「段階的レイトスペシャライゼーション」の仕組みを取っています。大学入学後に幅広い分野の大学教育に触れながら、自らの適性や関心などにもとづいて、コースを選択できる仕組みです。
私が所属する「電気エネルギー工学コース」、「電子デバイス工学コース」では、電気電子工学の学問分野に軸足を置いており、両コースの基礎となる電気回路、電子回路、電磁気学などの専門基礎科目を学んだ後に、電気エネルギー工学コースではエネルギーシステム工学など電気エネルギー関連の専門科目、電子デバイス工学コースでは主に半導体デバイスなど電子デバイス関連の専門科目を学びます。いずれのコースも基礎となる学問を体系的に修得することができます。
4年次には大学における学修の総まとめとして卒業研究を行います。私の研究室では、シミュレーションだけでなく、分子線エピタキシー装置などをはじめとする、種々の最先端実験装置を用いて、学生自身の手でこれらの光・電子デバイスを作製しながら研究を進めることが可能です。この他にも、情報通信、パワーエレクトロニクス、情報処理、生体イメージング、電磁界解析、システム制御、プラズマ、高周波デバイスをはじめ、様々な先端的研究に取り組んでいる研究室があります。そこでの教育・研究を通して、電気電子工学の知識を有し、将来高度な先端科学技術の創出に貢献できる実践的な能力を有する人材を育成しようとしています。