地球宇宙化学

地球外物質の組成を調べ、宇宙の情報を得る


日高洋 先生

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科/環境学研究科 地球環境科学専攻

どんなことを研究していますか?

地球宇宙化学は、地球上で起こる様々な自然現象(例えば火山噴火、地震、異常気象)について化学的な立場からその解明に取り組む学問分野です。また、地球外(宇宙)の物質を物理化学的に分析し、宇宙(主として太陽系)の進化について解明する学問分野です。

私の専門は、その中で同位体宇宙化学というものです。同位体とは、同じ元素であるために化学的性質は同じで、原子核の中性子数だけが違う物質をいいます。地球外物質に含まれるいくつかの元素について、その元素の構成(同位体組成)を調べることで、その物質がどのような環境で作られてきたか、太陽系以外の成分が混入しているかどうか、宇宙空間にどのような状態に置かれていたかなどの情報を得ることができるのです。

資源開発のための惑星探査にもつながる可能性も

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また、地球外物質の中には地球上の岩石とその化学組成(物質を構成している元素の組み合わせ)が大きく異なるもの、地球上の岩石中に安定な状態で存在するのが困難な鉱物等が含まれていることもあるので、宇宙惑星物質の探索は将来的に資源開発に着目した惑星探査にもつながる可能性があります。

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つくばの国立科学博物館で、隕石の質量分析計とともに

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→民間企業
  • ●主な職種は→技術職
  • ●業務の特徴は→金属、セラミックス等の材料を取り扱う製造など
分野はどう活かされる?

博士後期課程まで修了した人は研究職(国立研究所等の研究員)に就いていますが、卒業生全体の1割程度。ほとんどの卒業生は博士課程前期で修了し、民間企業の技術職や地方公務員に就いており、半数近くは必ずしも大学における専門分野を活かしているわけではありません。

先生から、ひとこと

2018年9月の小牧隕石、2020年7月の習志野隕石と、最近、日本でも隕石が落下し、見つかっています。また、はやぶさ2も小惑星試料を無事に持ち帰ってきたようです。これらの地球外物質を科学的に分析して宇宙のことを調べることにより、新しい発見につなげるのは大変やりがいのある楽しい研究です。皆さんもぜひ挑戦してみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

地球宇宙化学には、地球上で起こる様々な自然災害事象(火山噴火、地震、異常気象)や環境問題(大気や海洋の汚染など)を化学的に解明する分野も含まれており、幅広い研究分野です。

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国際学会のバンケット会場で

先生の研究に挑戦しよう

現在進行中の惑星探査計画(例えばハヤブサIIなど)によってもたらされる物質(リターンサンプル)を使って、どのようなことが研究できるかを企画し、そのための模擬実験(地球上の岩石や既存の隕石を使っての実験)を行う。

興味がわいたら~先生おすすめ本

星のかけらを採りにいく 宇宙塵と小惑星探査

矢野創

2010年、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は地球帰還を果たしました。前人未到の試みだったのは、地球重力圏外にある小惑星イトカワに着陸して、宇宙塵、つまりその星のかけらを人類で初めて持ち帰ったことです。著者はその試料採取任務の責任者で、宇宙塵の専門家。この本は、宇宙塵を分析することで地球外物質が発見されれば、それは太陽系や生命の誕生の謎を解明する手がかりになる大きな可能性があることを伝えます。宇宙塵研究、さらには宇宙探査の現場から新たな挑戦を語ります。 (岩波ジュニア新書)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。