太平洋の海洋プレートが大陸プレートに沈み込んで起こる巨大地震が懸念されています。プレートが動いて地震が起きるように、地震の発生には地球を構成する岩石が変形するしくみが密接に関わっています。また、もう少し大きなスケールで見ると、地球の内部はゆっくりとした時間スケールで対流していますが、その現象も岩石が変形することによります。
私の専門は「岩石変形学」で、研究の目的の一つは地震のメカニズムをより深く理解することによって、防災や減災に役立てることにあります。また、もう一つの研究目的は、岩石の性質を利用して地球内部から熱を抽出しエネルギーに変換する地熱発電の発展に貢献することです。
岩石から惑星の起源や進化を読み解く
しかし、それら社会に役に立つ研究が大事な一方で、直接的には社会に役は立ちませんが、我々が住んでいる星がどうして誕生したのか、岩石からできており地球と似たような惑星である火星や金星と地球がなぜ違うのか、地球で生命が誕生し進化したのはなぜか、というような問いかけに答えるための研究も重要だと考えています。そのような問題を解くヒントが、地球を構成する岩石には記録されています。
例えば、2020年に探査機はやぶさによって回収されたイトカワの試料も岩石(鉱物)ですが、探査機はやぶさ2が目標としているのも、小惑星リュウグウから岩石を持ち帰って惑星の起源や進化を読み解くことです。
一般的な傾向は?
- ●主な職種は→教員、研究者、技術者
- ●業務の特徴は→地質コンサルや岩盤開発(エネルギー関係)の関連事業など
広島大学地球惑星システム学科では、地球(および惑星)で起きる現象を一つのシステムとして捉えています。例えば、地球の表層温度は少なからず揺らいではいますが、過去40億年ものあいだ海が持続的に存在したことからも、ほぼ一定に保たれていたと考えられています。それは、大気と海洋と地球内部の相互作用の結果であり、温室効果ガスである二酸化炭素の大気中濃度も、地球内部を含めたグローバルな循環で維持されています。
しかし、そのような相互作用は、最近ようやく注目され始めたばかりであり、まだまだわからない現象がたくさんあります。ですから、ある意味、新しい発見やお宝がまだ山のように眠っている分野ともいえます。皆さんにそういう宝物探しに加わっていただければ、こんなに心強いことはありません。
興味がわいたら~先生おすすめ本
地球のしくみを理解する 広島大学理学部地球惑星システム学科へようこそ
広島大学理学部地球惑星システム学科:編
広島大学理学部地球惑星システム学科は、「地球」の表層や内部で起こっている自然現象を、物理・化学・生物・地学の諸過程が複雑に絡み合ったシステムと捉えた研究をしています。対象は地震、断層、造山運動、風化、マントル対流等。この本は、同大学地球惑星システム学科編として、地球惑星科学に興味を持つ高校生や一般に向けて、同学科の教員がどういった研究を行っているかを紹介します。執筆は、同学科の地球惑星物質学、地球惑星化学、地球惑星物理学の3グループが、分担しています。ちなみにカリキュラムは、基礎科目から専門科目へと段階的に体型化されているので、高校時代に地学を学習していなくても大丈夫とのことです。 (広島大学出版会)