教育学

へき地小規模校教育が、未来の教育のカギを握る!


玉井康之 先生

北海道教育大学 教育学部(釧路校) 教員養成課程 地域学校教育実践専攻/教育学研究科 学校教育専攻

どんなことを研究していますか?

人口減少社会に突入し、全国的に小規模校が増える中で、「へき地・小規模校教育」が未来の学校のモデルになると、改めて見直されています。北海道は、市町村の80%が過疎地域に指定され、また道内の40%がへき地校に指定されています。へき地・小規模校教育では、個々の子どもに目が行き届き、勉強だけでなく、様々な子どもの個性や関心に応じた指導ができます。また異なる学年を一つにした複式学級授業を実施する学校では、異学年交流や異なる能力の子どもが包接的に学び合うことができます。

このようなへき地・小規模校の教員には、異学年教室に対応するためのきめ細かい指導力や、学校を含めた地域への深い理解が必要とされます。日本最東に位置する北海道教育大学釧路校では、日本で唯一のへき地・小規模校教育研究センターを持ち、へき地小規模校教育を対象にした新しい教育の可能性を追求する研究を深めています。

地域を学ぶ、地域で学ぶ。子どもの密接な信頼関係を育む地域教育は、これからの発達の要

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市街地出身の私は一貫して、へき地・小規模校教育に取り組み、へき地・小規模校の運営やカリキュラムについて研究してきました。それはへき地・小規模校は、これからの少子化の中での新たな可能性を秘めていると確信しているからです。私は北海道のへき地・小規模校を対象に、学校と地域社会がどのように連携しているか、子どもの発達の環境はどうあるべきかを調べてきました。その中で学校を取り巻く地域の教育は、子どもと学校がともに発展するために必要であることを明らかにしました。

また、学力困難地域での、総合的に学力を向上させるための研究では、自然体験、社会体験、生活体験などの活動を意識的に提供することや、家庭での生活習慣を改善し地域の人間関係を築くことも、発達の大きな条件となることを明らかにしました。

子どもの成長・発達には、学校だけではなく、家庭はもちろんのこと、地域も含めたあらゆる環境が重要なのは言うまでもありません。学校のカリキュラムも、身近な地域を探究しながら、いろいろな教科の内容とつながっていることが理解できるならば、子どもたちは学ぶ意欲を高めるとともに、学びと社会がつながっている実感を持って学習を進めることができます。地域教育は、子どものトータルな発達と学校教育の発展にとって重要なのです。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な職種は→教育職・小中学校の教員
  • ●業務の特徴は→子どもたちの発達をトータルに指導・支援する
分野はどう活かされる?

北海道教育大学釧路校は、小学校教育を中心にしているので、ほとんどが小学校や中学校に就職しています。教職就職率は全国の中でも最も高い方です。教職は子どもたちをトータルに指導し、それによって未来の社会を作る仕事です。卒業生のほとんどがその役割に生きがいを感じています。

教師になった人は市街地にも勤務していますが、へき地・小規模校に希望する人も多く、かなりの人がへき地小規模校に勤めています。

先生から、ひとこと

教員を養成する学部は、人を育て、それによって未来の社会を育てるとても重要な役割を持つ学部です。その中の北海道教育大学釧路校は、日本最東端で最も小さい大学ですが、教員と学生の関係や学生どうしの関係も密接で、そんな中で皆が教職を目指して切磋琢磨する大学です。そのような雰囲気の中で、学生は入ってから伸びていきます。この最東端の大学で、仲間と一緒に、成長する喜びを感じてみませんか。

先生の学部・学科はどんなとこ

北海道教育大学は、北海道各地に5つのキャンパスを有しています。その中で釧路校は、へき地教育プログラムを日本で唯一体系的に実施しています。へき地教育プログラムとは、少人数に合った指導の体系的な方法のことで、理論的な講義だけでなく、実践的なへき地校体験実習も豊富に揃えています。

先生の研究に挑戦しよう

教育には、説明できる力が不可欠となります。高校生が、小学校レベルの教科書をどのように教えるかを考えてみてください。意外と難しいことに気づきます。問題を解く力と、問題を教える力とは異なるということです。

例えば、1+1は、11ではなく、2以上でも2以下でもなく、2であるということは、どのように説明すれば良いですか。誰もが2であると回答できても、教える時には、説明できる力が必要になります。教育学部は、解ける力だけでなく教える力を身につけるところです。

興味がわいたら~先生おすすめ本

学校評価時代の地域学校運営 パートナーシップを高める実践方策

玉井康之

学校の先生の仕事は教科を教えることだけではない。開かれた学校が求められている今、学校が自らの学校運営を評価し公開しなければならなくなっている。また、職場体験や奉仕活動など地域を連携した教育も重視されている。不審者対策など地域の防犯など学校の役割は増える一方である。本書は、地域に信頼される学校づくり、地域と連携した教育など、「地域」に関する学校運営の本。学校の役割の多様さを知るために。 (教育開発研究所)


学級経営の基盤を創る5つの観点と15の方策

玉井康之、川前あゆみ、楜澤実

学級経営は、子どもが居場所を持てる重要な学習生活基盤である。この学級経営がうまくいかないと、子どもたちの学校生活は楽しくなくなる。本書は学級経営がうまくいく基盤をいかに創るかの基本的な観点を捉えたもので、その観点にそった15の方策を実践していけば、学級経営がうまくいく。本書はその実践的な方法を捉えている。 (学事出版)


教育活動に活かそう へき地小規模校の理念と実践

二宮信一、川前あゆみ、玉井康之

著者の玉井康之先生が在籍する北海道教育大学釧路校は、へき地小規模校教育の研究者が多いが、人口減少社会に突入し全国的に少子化・小規模校化する中で、へき地小規模校教育が改めて見直されている。小規模ならではの良さを生かした教育、また、へき地の地域性を生かした教育を提言する。 (教育新聞社 )


アラスカと北海道のへき地教育 ALASKA:Visiting Rural Small School

川前あゆみ、玉井康之、二宮信一

アラスカと北海道は文化的にも自然的にも極めて似ており、特にいずれもへき地教育の先進地でもある。アラスカと北海道を比較しながら読むと、アメリカと日本を比較できて面白い。 (北樹出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。