精神神経科学

うつ病

過剰なストレスで壊れるグリア細胞に着目した、うつ病の解明


國澤和生先生

藤田医科大学 医療科学部 医療検査学科(保健学研究科 レギュラトリーサイエンス部門)

出会いの一冊

脳とグリア細胞 見えてきた!脳機能のカギを握る細胞たち

工藤佳久(技術評論社)

日本でのグリア細胞の研究は歴史が浅く、まだまだ未解明な細胞です。著者の工藤先生は日本のグリア細胞研究の第一人者ですが、とてもユーモアがある先生で、グリア細胞の機能をこれまでの失敗談を交えて分かりやすく記載してくれています。グリア細胞に興味があれば、ぜひ読んでみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

過剰なストレスで壊れるグリア細胞に着目した、うつ病の解明

増加するうつ病患者

昨今のストレス社会が原因でうつ病になる人がとても増加している…そんなニュースを耳にした方も多いと思います。私はうつ病の新しい治療薬やどうしてうつ病になってしまうのか研究をしています。

うつ病と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。脳の中にある神経細胞が上手く機能しなくなっている…そんなイメージを持っていますか。皆さんの考えていることはあながち間違いではありません。

グリア細胞の一種が神経の活動を調節

では、なぜ神経細胞が不調になってしまうのか。私が着目しているのはグリア細胞です。実は脳の中は皆さんご存知の神経細胞は10%ほどで、残り90%はグリア細胞が占めています。つまり、「グリア細胞の不調 = 脳全体の不調」に繋がる可能性があります。

グリア細胞の中で特に着目しているのが、神経細胞に直接巻きついて神経細胞と独自のネットワークを構築しているオリゴデンドロサイト(髄鞘)です。オリゴデンドロサイトは神経の活動を調節して、活動が低ければそれを高めるように、逆に活動が過剰になれば抑えるような役割を担っています。

将来は壊れたグリア細胞を再生する薬を

私はこのオリゴデンドロサイトが過剰なストレスによって壊れてしまうことを発見しました。これが神経細胞の不調に繋がり、うつ病の原因になると考えて現在研究に取り組んでいます。

将来は壊れてしまったオリゴデンドロサイトを再生するような薬を開発して、うつ病を治せればと考えています。

脳はまだまだ謎が多く、解明されていないことがたくさんあります。謎が多いからこそ、それを解明出来た喜びはとても大きいです。ぜひ皆さんも大学に入ったら未知の分野に飛び込んで研究してみてはどうでしょうか。

生体内の遺伝子の発現レベルをリアルタイムPCRという装置で解析することで、どの遺伝子が病気に関わるのかを探索しています。
生体内の遺伝子の発現レベルをリアルタイムPCRという装置で解析することで、どの遺伝子が病気に関わるのかを探索しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は元々薬学部出身で、当初は薬が好きで卒業後は直ぐに臨床現場で働こうと思っていました。しかし、薬理学(薬がどのように効果を示すか)を学ぶ研究室に所属し、新しいことを次々と発見出来る楽しさに感動してしまい、そのまま研究の道に進みました。皆さんも何処で大きな分かれ道があるかは分かりません。その分かれ道では大きく迷い、ぜひ良い選択をして欲しいです。

病気の原因や治療薬を見つけるためには身体の中で起こっている現象を一つ一つ検証していく必要があります。写真のピペット操作は実験でとても基本になる作業です。
病気の原因や治療薬を見つけるためには身体の中で起こっている現象を一つ一つ検証していく必要があります。写真のピペット操作は実験でとても基本になる作業です。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「髄鞘・神経ネットワークの破綻に着目したうつ病の病態機構の解明」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
治療候補薬が見つかってもすぐにヒトに投与することは出来ません。動物に投与して有効性や安全性を検証します。写真は動物の記憶機能を見る試験法になります。
治療候補薬が見つかってもすぐにヒトに投与することは出来ません。動物に投与して有効性や安全性を検証します。写真は動物の記憶機能を見る試験法になります。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 薬剤・医薬品

(2) 病院・医療

◆主な職種

(1) その他医療系専門職(臨床検査技師・理学療法士等)

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 品質管理・評価

◆学んだことはどう生きる?

私達の研究室では主にうつ病や統合失調症といった精神疾患関連の創薬やバイオマーカー開発を行なっています。卒業後は製薬企業や臨床検査機器メーカーで薬や試薬開発に携わる方、また薬の知識を活かした臨床治験コーディネーター(病院で臨床治験の適切な管理をする仕事)になられる方が多いです。

先生の学部・学科は?

藤田医科大学は医療系大学として附属病院が併設されていることからも、研究成果を臨床現場に活かそうとする強い志を持った教員がとても多いです。将来臨床に携わりたい、また臨床との架け橋になるような仕事をしたい、という方には幅広い選択肢を持てる、とても良い大学だと思います。

先生の研究に挑戦しよう!

脳はとても複雑です。まずは、脳の中にはどんな細胞がいて、それぞれどのような役割を持っているか調べてみると良いと思います。さらに、さまざまな脳の病気にどの細胞が関与するか調べてみましょう。

中高生におすすめ

進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線

池谷裕二(ブルーバックス)

脳科学研究で最先端を走る池谷先生が脳のことを中高生にもわかりやすく書いてくれています。私も大学に入ってからこの本に出会い、脳は不思議だな、面白いなと感化された一冊です。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

やっぱり薬学部が良いです!

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

アメリカです。理由は「挑戦」に対して非常に寛容だからです。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

バドミントン部

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

釣りをしながら地平線を眺めることです。


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