パイの物語

ヤン・マーテル

カナダ人のヤン・マーテルによる小説です。2002年にはイギリスのブッカー賞を受賞しました。初めて読むときは、その文章の美しさと、様々な実験的な創作の試みに息を飲みます。インド人の少年が、家族と家族が経営していた動物園の動物たちと一緒に、日本の船舶会社の所有する船でカナダに移動する際に遭難し、唯一生き残ったベンガル虎と一つ船に乗って漂流するという話です。

言ってみればただの冒険談に聞こえるかもしれませんが、話はそんなに簡単ではありません。パイの語る話を通じてマーテルが描きたかったのは、「宗教」とは、人間の心の底に潜む「悪」とは、という永遠のテーマです。そして何が真実で何が物語なのかという、これも永遠のテーマ。

彼が語ることが真実なのかどうか、ということはどうでもいいこと。歴史とは、結局生き残った人が語ることで伝えられていくものです。そして物語とはそのような歴史を、象徴を使って語っていくものでもあります。一人の少年の物語はそんな大きなテーマを私たちに伝えてくれます。ぜひとも手に取って読んでみてください。 (訳:唐沢則幸/竹書房)

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