代数学

1+1=0となることもある「数の体系」=可換環の研究


寺井直樹先生

岡山大学 理学部 数学科(自然科学研究科 数理物理科学専攻)

どんなことを研究していますか?

整数の集合{・・・,-2,-1,0,1,2,・・・}のような足し算、引き算、掛け算が自由に行えるものを「環」といいます。合成関数(関数の積とみなしている)のように行う順序を変えることによって結果が異なってしまうものもありますが、「環」の中でさらに乗法(掛け算)が交換法則を満たしているものを「可換環」と呼び、それに関する理論を、「可換環論」といいます。

可換環では、1+1=0となったり、2×3=0となったりすることもある、普通の数ではない新たな数のシステムを考えます。可換環論は、もともと整数が持つ素因数分解という性質をもう少し広い範囲の数で一般化して考えるために考え出されたものです。また、円や放物線のような多項式で与えられる図形を代数的手法で研究する代数幾何学の基礎としても可換環論は重要です。

現在では可換環論独自の問題意識からも理論は発展しているのですが、「順列・組合せ」の発展である組合せ論や統計学にも応用されています。私は組合せ論と可換環のかかわりを研究しています。その相互関係が少しずつ理解できていくことが研究の醍醐味です。

この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→教育関係、IT企業(学部卒業後、旧帝大の大学院に進む学生も多い)

●主な職種は→高校や高専、大学の教員、ITエンジニア

分野はどう活かされる?

インターネットショッピング等で用いられている暗号通信は代数学の基礎理論の上に成立しています。これらの基礎理論も希望すれば学べるし、就職後も活かせます。

先生の学部・学科はどんなとこ

岡山大学理学部数学科は1学年20数名という小規模な学科ですが、落ち着いた環境でしっかり現代数学の基礎が学べます。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

皮肉なことに数学の魅力の一端は数学の難解さにあると思います。苦労して理解したり、問題が解けたりするからこそ、その時に爽快感、達成感を味わうことができるのだと思います。興味ある方は、ぜひ、大学の数学科でこの苦しみと喜びを共有しましょう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

代数系入門

松坂和夫(岩波書店)

学部で学ぶ代数学の基礎である群・環・体をガロア理論に至るまで標準的に易しく解説した本です。初版出版は1976年で、2018年には43刷になっている長年、読み継がれた名著です。長年読まれた本は改訂され誤植が少ないメリットもあります。大学で学ぶ代数学に興味のある方にお勧めします。


代数学入門第1課

一松信(近代科学社)

代数学に関するちょっと毛色の変わった入門書です。この本は第2課、第3課と続いていくのですが、この1課の前半では初めにユークリッドの互除法などの初等整数論が具体的に述べられ、その後に1+2iといった形のガウス整数に関する理論が書かれています。ちょっとマニアックですが、抽象的に代数的構造を考える必要性が理解できる助けになると思います。