歯周治療系歯学

骨の再生

歯周病と微生物、体と免疫の研究から、骨再生の研究へ


前川知樹先生

新潟大学 歯学部(医歯学総合研究科)

出会いの一冊

未来の科学者たちへ

大隅良典、永田和宏(KADOKAWA)

ノーベル賞を受賞された大隈先生が著者です。大隈先生は、日本で近年、科学技術に対する競争力が落ちてきており、世界でトップクラスだった時代は終わってきていることを憂慮し、さまざまな方策をたてています。今後の若手の研究者が、日本の未来の科学技術を支えていくことに期待している理由や、そのための土台作り、研究者の醍醐味を御自身の経験から対談式で話してくれています。

こんな研究で世界を変えよう!

歯周病と微生物、体と免疫の研究から、骨再生の研究へ

歯周病の影響をマウスで証明

私は歯学部を卒業し、大学病院での研修医を終えた後、研究の世界に入りました。最初に興味をもったのは、歯周病という口の中の病気です。歯周病は、はぐきと歯を支える骨の病気で、微生物が感染することによっておこります。

歯周病は歯が抜けてしまうだけではなく、全身へ影響することが知られています。大学院生の時に、ヒトの歯周病と似たモデルをマウスで作り出すことに成功し、マウスにおいて歯周病が心臓血管系に悪影響を及ぼすことを示し、テレビなどにも取り上げられました。

アメリカで原因菌を解析、治療法開発へ

そこから研究がさらに楽しくなり、今度は治療法開発をしたいと考え、アメリカに留学することにしました。実は歯周病の詳しい原因はよくわかっていませんでした。そこで歯周病の患者さんのはぐきからよく見つかるPgという菌について解析を行いました。

すると、本来、体を守るヒトの免疫を利用して、しぶとくはぐきの中に生き残りながら、はぐきに悪い炎症(腫れ)を作り出していることがわかりました。私たちは、Pgが免疫から逃げるメカニズムを解明し、ある薬でPgだけを殺すことに成功しました。マウスの実験から、サルの実験を経て10年かかり、いまはヒトに応用するための研究がアメリカで進んでいます。

歯周病で溶けた骨の再生を目指す

それから日本に戻ってきて、今度は溶けた骨を再生しようと研究を開始しました。骨を再生できる薬が必要な病気は多いのですが、有効なものは少ないのが現状です。アメリカ、ドイツの大学や日本の大学、研究機関と共同で、骨を作り出す薬を開発し、数年後にはヒトに応用できるのを夢見て頑張っています。

老化した体ではなかなか骨を再生することができません。そこで研究室では、骨を再生するために必要なDEL-1という分子を誘導させることで、減った骨を増やそうと取り組んでいます。
老化した体ではなかなか骨を再生することができません。そこで研究室では、骨を再生するために必要なDEL-1という分子を誘導させることで、減った骨を増やそうと取り組んでいます。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私の研究テーマは、大学院、留学時代、留学後で変化しています。テーマは一貫せずとも、全ての事柄はいくつかの点で繋がっているので、さまざまな領域に挑戦してみることは重要だと感じています。とくに現代では、他領域との交流が盛んに行われているため、人文系の研究者や工学系、薬学系の先生と共同で新しいことに挑戦しています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「内因性抗炎症分子の再誘導による炎症性疾患治療法の基盤研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 病院・医療

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 医師・歯科医師

(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(3) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

WHOなどの世界保健機関の歯科保健分野があります。また海外の大学との姉妹校提携が多いため、ダブルデグリープログラムなどユニークな認証制度があります。留学生が多いため、国際感覚が身につきます。

タイ王国内のレストランでの写真です。
国内の学会や海外の学会に参加し、研究に関して発表するとともに、現地の美味しい食事をしたり、新しい友達と出会ったりすることができます。
タイ王国内のレストランでの写真です。
国内の学会や海外の学会に参加し、研究に関して発表するとともに、現地の美味しい食事をしたり、新しい友達と出会ったりすることができます。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

生物と無生物のあいだ

福岡伸一(講談社現代新書)

生物学の研究では世界が競って新しいものを解明しようとしています。いまこれをみている学生が将来の日本の科学技術を支えていくことを考えると、ぜひ読んでいただきたい書籍です。著者が体験した米国での実際の競争が記されています。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

医療系

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

米国に住んでいたからこそ日本以外は考えられない

Q3.大学時代の部活・サークルは?

バレーボール部

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

ラーメン屋

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

旅行、飛行機に乗る


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
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