通信・ネットワーク工学

電磁材料

電磁気学の常識を打ち破る、世界初の電磁材料を開発


若土弘樹先生

名古屋工業大学 工学部 電気・機械工学科(工学研究科 工学専攻)

世界を変える研究はこれ!

電磁気学の常識を打ち破る、世界初の電磁材料を開発

見えないはずの電波が見えてくる

私のラボでは電波に対して一風変わった振る舞いを示す材料を作っています。

そもそも中高生のみなさんに電波をイメージするのは難しいかもしれませんが、実は大学生も同じです。大学で電波の基礎を学ぶ電磁気学という学問は、電気電子系の学生にとって苦手意識を持たれてしまう傾向があります。

目に見えない電波を考えるのは非常に難しいと感じる人が多いのですが、ひとたび研究室に入って研究を始めると、なぜか見えないはずの電波の動きが頭の中で見えるようになっていきます。

「周波数」が電波の性質を決める

恐らくみなさんの身の回りで電波を使った馴染み深いモノと言えば、テレビ、スマートフォン、Wi-Fi、Bluetooth、電子レンジなどになるかと思います。

これから私たちの生活を大きく変えると言われている、IoT(Internet of Things)機器もますます普及するでしょう。これらの電波は情報を伝えるだけでなく、そのエネルギーで食べ物を温めたり、近くのものを検出したりすることにも使われています。

ただ、同じように捉えられるかもしれない電波にも色々な種類があり、特に電波の波が一秒間に何回繰り返されるかを示す「周波数」によって大きく特性や性質が変わることになります。このため、周波数は電波の世界では多くのことを決めてしまう非常に重要な、言わば神様のような存在になります。

例えば、スマートフォンの中にあるアンテナに関しても、やり取りされる電波は周波数を基に決められています。この周波数が変化してしまうと、アンテナに限らず世の中にある全ての材料の振る舞いが狂ってしまい、時には狙った機能や性能が全く得られなくなります。

「同じ周波数なら、同じ振る舞い」が常識

ただし、このような電波の周波数に対する変化を別の視点から考えてみると、もし周波数を“固定”すると、各材料はどんな電波に対しても同じ振る舞いをするのではないかと思うかもしれません。

長年電波の研究の世界でもそのように考えられてきましたが、私のラボでは世界で初めてこの例外となる材料を開発しました。

「パルス幅」を頼りに狙った電波を拾える

ここでは、電波がどれだけ長い時間継続するかを示す「パルス幅」によって材料の振る舞いを変化させることに成功しました。つまり、同じ周波数の異なる電波が無数に存在する暗闇のような中でも、パルス幅を頼りにして狙った電波だけを拾うことができるようになりました。

今、私のラボではこのような珍しい新材料を駆使しながら、電波とそこに載せられる情報を操る研究に取り組んでいます。私たちの変わった研究が、次世代の当たり前になるように。

コンピュータ上で用いられる電磁材料の数値解析モデル。左手前から右奥に向かって(Waveguideに沿って)電波が伝わり、設計された電磁材料(Metasurface)の吸収効果を観測。

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製作された電磁材料。周期的に配置された金属を回路素子で接続。ケーブルを介して電気信号を送ることで電磁材料の特性を変化。
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