第2回 亜鉛(Zn)欠乏で毎年世界50万人の子どもが死亡する
ミネラルには16種類の元素があり、比較的量の多い「多量ミネラル」と「微量ミネラル」に分けることができます。
◆多量ミネラル――Ca(カルシウム)、P(リン)、S(イオウ)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、Cl(塩素)、Mg(マグネシウム)
◆微量ミネラル――Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Se(セレン)、Mo(モリブデン)、I(ヨウ素)、Cr(クロム)
Ca、K、Naなど多量ミネラルは、骨格を形成したり、味覚や神経を作ったりする重要な働きをします。これに対してFe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)などの微量ミネラルを見て、何かに気づきませんか。そう、微量ミネラルは工業製品の材料になっているものが多い。一見、生命活動に関係していないように見えます。でも微量ミネラルも多量ミネラル同様、私たちの生命活動に欠かせない栄養素です。ただし、鉄や亜鉛など微量金属ミネラルは、欠乏してはダメなことはもちろん、過剰摂取も問題になります。一番大事なことは、必要摂取量を摂ることです。
微量ミネラルの具体的な働きを見ていきましょう。Zn(亜鉛)は不足すると、成長を大きく阻害してしまう必須ミネラルです。母乳中に含まれている亜鉛が欠乏すると、赤ちゃんに皮膚疾患が出てしまいます。寝たきりのお年寄りの場合、床ずれを起こしてしまうのは亜鉛欠乏からです。
世界保健機関WHOはDALY(障害調整生命年)という健康への影響評価の指標を採用しています。その中に、世界規模で最も生活に影響を与えたリスク評価があります。1位が(食糧不足などによる)低体重、4位にタバコ…と続き、9位に鉄不足、11位に亜鉛不足となっています。
また米国疾病管理予防センター(CDC)は、世界人口の16億人がFe(鉄)欠乏し、毎年約50万人の子どもがZn(亜鉛)欠乏で死亡するということを報告しています。世界中の非常に貧しい国の子どもたちを救うために微量ミネラルは必須の課題なのです。
赤ちゃんの健康に直接関係する粉ミルクには、必要な微量ミネラルがすべて入っていますが、興味深いのは各国の粉ミルクの比較です。成分表示を見ると、日本の粉ミルクにはヨウ素が含まれていません。これは、日本では、海藻から容易にヨウ素を摂ることができるからです。しかし、海のない国では、ヨウ素はとても摂取しにくい必須微量ミネラルになります。国により、微量ミネラルを取り巻く状況は様々であり、いかに微量ミネラルが重要であるかということが実感できるかと思います。