第3回 人が集まる広場は周囲も再生させる ~札幌の試み、ニューヨークの好循環
今まで良いとされてきた都市像は、実は良くないのではないか、もっと居心地の良い空間に変えていこうという動きが起こっています。
その一例を紹介すると、北海道「札幌北3条広場」が2014年7月にオープンしました。最近では珍しく、本当に広場として新しくできたところで、重要文化財に指定されている昔の北海道庁、赤レンガの建物をメインとした広場です。ウェブサイトがありますので是非見ていただきたいと思いますが、北海道庁に突き当たる道路の先部分、約27m×100mの道路を、道路の両側に建つビルの所有者(企業)が資金を出し合って整備し、恒久的に広場としたのです。
※札幌北3条広場 http://www.kita3jo-plaza.jp/
好循環が起きているニューヨークの広場
道路を広場にする取り組みが、一番進んでいるのはニューヨークです。
2009年、ニューヨークは中心地であるタイムズスクエア前のブロードウェイをパラソルとチェアのある広場にする実験を行いました。実験と言っても、簡単ではありません。道路から広場にするということは、車が通れなくなるため、周りに迷惑を生じさせる可能性が出てきます。ですから、実施前には考えうる限りのシミュレーションを試行して、時間限定・地域限定で完全に広場をつくってみたのですが、実際には非常に好評で、現在は仮設広場ではなく、本当の広場ができています。
ここ10年程、交差点の一部を広場にするなど、ニューヨークの街中のあらゆるところに広場ができています。それは、ただ単に広場をつくっているのではなく、まちづくりをしていると言えます。例えばダンボという地区、この周りにはアーティストが多く住んでおり、彼らが道にペインティングを施します。これはあくまで仮設のペインティングで、数年試行してうまくいかなければ、道路に戻せば良いのです。また、周辺のベンチャー企業が太陽電池を搭載したパラソルを寄贈しており、これで電源供給できます。無線LANを整備すれば、ノートPCやタブレットなどを持ちこんで仕事ができる。すると今度は周囲のビルの1階がレストランなどに再生されていきます。広場だけでなく、周りが再生していく。近隣の人々が広場を運営し、イベントなども企画して、一層盛り上げていくというサイクルが回り出すのです。
高架の線路が長い長い公園に
ニューヨークからもう一例ご紹介します。ハイラインという、細長い公園があります。この場所には以前、工業用の貨物列車の高架の線路がありました。物流が鉄道からトラックに変わり、1980年頃には使われなくなり、放置されていました。
それが、市民の運動によって、公園になったのです。高架線を転用したため車などを気にする必要もない、公園でありながら非常に長い歩行者ネットワークになりました。公園の再生に合わせて周囲の建物に店舗が入るなど、1本の歩行者軸をつくったことで街が大きく変わってきました。歩行者軸の存在は、貨物列車の高架線という工業化時代の遺産が、人のための空間として再生したことを意味しているのです。
つづく
第4回 都市再生のキーワードは「ウォーキング」 <前回を読む>
第2回 高層ビルを建てることが「都市再生」か