第3回 超新星爆発を「京」を使ってシミュレーションしてみよう

私たちはスパコン「京」を用いた超新星爆発のシミュレーションを、実際にどのように行ったか。それについて話しましょう。
先に述べたように超新星がどのようなメカニズムで爆発するのかは、天文学者が50年も頭を悩ませている難問です。難しい理由は複雑な高エネルギー現象が絡みあうためです。私たちの立てた、ニュートリノが爆発を後押しするというニュートリノ加熱説は有力ではありましたが、これまでは、現実の超新星爆発とは異なる設定のシミュレーションしか行えなかったため、それが正しいかどうかの議論を進めることができませんでした。
「京」でやってみる前に、私たちは最初、普通のパソコンでシミュレーションしてみました。ところが、うまくいきません。失敗の理由は、これまでの取り組みと同様、星の形状を完全な球と仮定したからでした。そこで、「京」を用い、より現実に近い大規模シミュレーションを行ってみました。その結果は以下のとおりです。
爆発0.040秒前――。重力崩壊により、星の中心の鉄球がつぶれ、重くて硬い中性子星ができる様子がわかると思います。その直後、ニュートリノの放射により、周囲は加熱・冷却され、複雑な対流が生まれます。
0.064秒後、物質の対流によって加熱され、0.096秒後、いびつに振動を始めます。0.164秒後、外側からの降着物質によって抑え込まれながら、次第に衝撃波は成長していきます。0.174秒後かき混ぜられた物質はあふれ、0.263秒後、星はついに爆発のときを迎えます。(詳しくは下記の動画をご覧ください)
最初に行ったパソコンでのシミュレーションが失敗した理由は、現実の超新星爆発とは異なる設定の、単純な1次元のシミュレーションしか行えなかったためです。これに対して「京」では3次元の計算格子を使い、現実と同じ条件で計算することができました。それによって私たちの仮説が正しかったという検証をすることに成功しました。
今回のシミュレーションは、実はまだなお計算プロセスに仮定を入れていて不十分です。今後はもっと精度を上げていきたいと思っています。スーパーコンピュータの中の宇宙が限りなく現実に近づいていくことを目指して――。
おわり
【関連サイト】
[ScienceNews2014]<サイエンスチャンネル/科学技術振興機構>
解明!超新星 最新の研究成果<youtube>
スーパーコンピュータ「京」を用いた計算で超新星爆発のニュートリノ加熱説が有望に<国立天文台ニュース> http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20140418

オリオン座はすでに消えている?
縣秀彦(小学館101新書)
冬の夜空を彩るオリオン座の中でもひときわ輝く1等星「ベテルギウス」は、星としての寿命を迎えた「赤色超巨星」という状態になっており、いつ爆発してもおかしくない。爆発すると、満月の100倍のまぶしさで輝き、昼間でも肉眼ではっきり確認できる。その後は次第に暗くなっていき、肉眼では見えなくなるのは4年後。超新星爆発にまつわる様々な宇宙の謎をわかりやすく解き明かす。
インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか
佐藤勝彦(講談社ブルーバックス)
宇宙誕生の標準理論として現在認知されているインフレーション理論。その理論を生んだ佐藤先生(東京大学名誉教授)が、だれもが理解できるよに書いた、最も平明なインフレーション理論の入門書。ノーベル賞候補でもある著者は、超新星爆発をスパコン「京」で再現した滝脇知也先生の師に当たる。
ニュートリノ天体物理学入門―知られざる宇宙の姿を透視する
小柴昌俊(講談社ブルーバックス)
超新星爆発から飛来したニュートリノを、岐阜県にあるスーパーカミオカンデでキャッチ。ニュートリノ天文学を打ち立てたノーベル賞学者が、宇宙が生まれた1秒後の世界から、大統一理論の再構築まで、スーパーカミオカンデのデータから宇宙の実像に迫る。