第1回 宇宙最大の爆発、超新星爆発のナゾに迫る
~まず宇宙の大きさを知ろう
今から宇宙最大の爆発、超新星の話をしたいと思います。私の専門は計算物理学です。これまでの物理学は、理論物理学と実験・観測物理学という2つのジャンルに分かれていましたが、計算物理学は新しい物理学として大きな期待が寄せられています。その研究手法をスパコン「京」に用いて、超新星爆発をシミュレーションで再現することに成功したのです。
天文の話をする前に、予備知識として、「べき乗」のことを説明したいと思います。10のn乗と使われるもののことですね。これは自然の階層構造を知る上でたいへん便利です。
人間の大きさを1mとします。地球の大きさは人間の約10000000倍(1000万倍)ですので、107mと表します。
太陽は109m、赤色巨星という超新星になる前の星は1011m。銀河の大きさは1021mです。
今度は小さいものを見ていきましょう。心臓の大きさは人間の10分の1mくらいですから、10-1mと表します。1より小さいものは符号がマイナスに変わります。ウイルスは10-7m、半導体は10-9m、原子・分子は10-10m、原子核は10-15m。
ちなみに物理学の世界で、世の中でこれ以上短い小さくできない長さがわかっています。プランクの長さと呼ばれるもので、この長さは、10-35mです。
さて、超新星の話に戻りましょう。超新星とは何か。簡単に言うと、星が爆発して光る現象のことです。新星とは明るい星が突如輝きだしまるで星が誕生したかのようですが、大きな質量の恒星がその一生を終えるときに起こす、大規模な爆発現象なのです。その明るさは、太陽の109倍あります。超新星が近くにあればとてもまぶしくて見ることはできません。
実は、超新星は、平安時代、百人一首の歌人、藤原定家の日記「明月記」にも記録されています。日記には「客星」と記録されています。客星とは新しい星のこと。日本や中国では昔、突発的な天体現象を占いに用いており、大きな関心事だったんですね。
みなさんが関心を持つのは、これから爆発の起こる可能性のある超新星かと思います。冬の夜空を彩る人気星座「オリオン座」。その中でもひときわ目立つ1等星「ベテルギウス」は、超新星爆発寸前の星と言われています。ペテルギウスが爆発すると、満月と同じぐらいの明るさで輝き、昼間でも肉眼ではっきり確認できます。星の進化の段階としては明日爆発してもおかしくありません。数万年後かもしれませんが(笑い)。天文ショーを楽しめる可能性があるのです。
不思議宇宙のトムキンス
ジョージ・ガモフ、ラッセル・スタナード(白揚社)
宇宙の一般書としては古典的な名著。相対性理論や量子の奇妙な世界を楽しく冒険しながら、物理学がしっかり学べる。物理学の入門書として最適である。難解な現象のイメージを伝えることに成功しているのはもちろん、その不思議さや面白さが伝わってくる稀有な一冊である。物語調でかかれているせいか、疲れず一気によめる。本書は古典的な名著と言ってよく、時代を超えて評価するに値する。少し難しいところもあるが、そこが逆に興味深い。私は大学時に読んだが、もっとはやく出会っていればと後悔した一冊である。
星が「死ぬ」とはどういうことか
田中雅臣(ベレ出版)
星のなかには一生を終えるときに大規模な爆発を起こし、非常に明るく輝くものがある。これが超新星爆発だ。星の寿命が尽きる時、星の中では何が起こっているのか。いまもなお多くの謎がある。本書は基礎から最先端のテーマまで、難しい物理学の問題が非常に噛み砕かれて一般の方にもわかるように書かれている。