第3回 ホームランを打つには(1)
一定練習と多様性練習でスキーマを獲得せよ
どうしたらホームランが打てるのかを科学的に考えてみましょう。
多くの人が、バットを振るプログラムは持っています。ただしバットにボールを当てることができるか、ホームランを打てるかは、運動プログラムと効果器(腕や脚など)のパフォーマンスに依存します。下肢や体幹の力を上肢やバットに伝える打ち方や、バットの遠心力を最大限にする打ち方、ボールを飛ばすためのバットの使い方など、ホームランを打つための理想的な運動プログラムがあります。その運動プログラムを向上させることが重要で、そのために「一定練習」(いわゆる素振り)によって、正しい運動パターンを身につけます。
けれども、そのままではど真ん中ストレートしか打てないので、「一定練習」に加えて「多様性練習」というものをします。これは、実際に経験する多様性を考慮し、コース、速度、球種、相手投手、試合の状況といった様々なパラメータを用いて打撃の練習をするわけです。正しいフォームで一定練習と多様性練習を繰り返すことで、一定のスキーマ、つまり法則やコツのようなものを獲得することができます。


多様性練習を繰り返すと、まったく練習したことがない球も打てるようになってきます。これは、スキーマ学習によって、何かの関係性のあるようなものをつかむことができたというわけです。
バスケットボール部の人は、過去に全く同じ場所から同じタイミングでシュートを打ったことはないはずです。それでも、コートのいろいろな場所で練習を繰り返すことで、今まで打ったことのない場所からでもシュートを入れることができます。それは絶え間ないシュートの練習でスキーマを獲得したおかげと言えます。
病院内での理学療法でも同じことです。患者さんは病院内でリハビリを受けて歩けるようになりますが、退院して、家や街に戻った時に「あれ、歩けない」ということが往々にして起こります。家や街は非常に多様な場所です。変化も起きます。ですから、多様性練習をして、スキーマを構築する必要があるのです。
