第2回 失敗を重ね、シュートが上達する理由
サッカーのシュートを学習することを想定してください。キーパーの位置を確認してシュートを打ちます。ループシュートを打とうとしましたが、ポストに当たってしまいました。これを運動制御でいうと、キーパーの位置を確認することを「刺激の同定」といいます。そして、キーパーが前に出ているのでループシュートを打とうと考えることは「反応の選択」です。こういったプログラミングをして命令を出します。そして、シュートを打ち(運動)、失敗という結果が出ます。
そのときの感覚というのは、筋や関節が覚えていて、自分の中に残ります。それが学習における「フィードバック」というもので非常に重要です。
同時に脳は、ループシュートを打つときにどんなプログラミングをしたかという情報も覚えています。この「プログラミング情報」と「結果からのフィードバック」を比較照合し、その結果、「力を入れすぎてしまった」という判断ができます。それが最終的に脳に戻っていき「もう少しフワっと打ったほうがよかった」と考えます。こういうふうに何度も何度も失敗し学ぶことで、だんだんループシュートの精度が上がっていきます。
このように、運動のフィードバックと意図している運動の比較により誤差修正していくことを「閉回路制御モデル」といいます。非常にわかりやすい理論ですが、ループシュートを何度も練習しないと学習ができないという点では効率が悪い学習といえますし、この理論では説明のつかない巧みさがヒトにはあります。

理学療法は「教師あり学習」
理学療法士は、患者さんにフィードバックを与える側。つまり「学習を促す教師」です。この点において理学療法は「教師あり学習」といえます。患者さんに、「体重かけすぎですよ」「体が左に傾いていますよ」などの知識を与えます。このとき、すぐに与えればよいというわけではなく、失敗したときや成功したときに、そのときの感覚を認知させてあげる時間が必要なのです。つまり、間(ま)を与えてから指導することが、次のパフォーマンス向上につながります。
