第4回 電子機器を溶かして金属を取り出す、有機王水法を開発!
はたして日本は、都市鉱山を活用して資源大国になることができるでしょうか。現在、クズ化された鋼材スクラップは年間約3000万トンにもなります。また、携帯電話に含有されている金の量は、日本で採掘する天然の銅鉱石(硫化鉱)に含まれる金のなんと10倍あると言われています。文字通り都市鉱山には“宝物”が埋まっています。
しかし最大の問題は、回収コストです。例えば、時給800円でアルバイトを雇い、携帯電話を分解し金を取り出す仕事をしてもらったとします。携帯1台に金は20㎎、つまり100円分が入っていますから、1時間に10台から金を回収できたとしても1000円。人件費引いて、儲けはたった200円。これでは話になりません。
さらに悪いことに、最近の携帯電話の金の含有量がガクッと減ってきていると言われています。その理由は携帯電話の進化です。携帯電話が初めて登場したころは通信機能しかなかったんですが、ショートメールができるようになり、カメラ、音楽を搭載できるようになり、だんだん携帯がコンピュータ化するに従って、金を使う量は増えてきました。ところが最近になり、スマホが登場し、防水技術が発展したりして、金を使う量は減ってきました。
効率よく貴金属を回収する独自の方法
これを解決するためには、金を含めた貴金属をもっと効率よく回収する方法を考案する必要があります。その方法としてこれまでに、乾式法と湿式法という貴金属のリサイクルシステムがありました。乾式法は使用済みの携帯機器を、銅などの製錬工程に投入し、含有する貴金属を回収する方法です。これは大規模な設備が必要で、立地に制約があります。
湿式法は王水やシアン化合物を含有する水溶液などで携帯などの電子機器から回収する方法で、こちらは小規模設備での操業が可能になります。この湿式法で、私たちは、有機王水を用いた独自の精錬法を考案しました。少し説明しましょう。
王水というのはイオン化させることで金属をなんでも溶かしてしまうことで知られています。私たちは有機溶媒中で解けるような王水を探しました。この有機王水を用いて、使用済みの電子機器から金属・レアメタルを回収するシステムを開発したのです。
都市鉱山から有用金属を回収することは、現在、世界中でしのぎを削っています。ある国では、都市鉱山回収のために廃液の環境への垂れ流し、健康被害が問題になっているところもあります。それらの問題を克服して、都市鉱山回収で効率の良いリサイクルを実現したいというのが私たちの願いです。
つづく
第5回 松野泰也先生インタビュー
<前回を読む>
第3回 鉄=鋼材が、1人10トンにもなる日本は、資源大国か