第3回 鉄=鋼材が、1人10トンにもなる日本は、資源大国か
君たちは2050年、どんな社会になっていると思いますか。都市鉱山をキーワードにして言うと、人工ストックの活用される社会です。つまり天然資源 の使用を極力回避し、使用済みの自動車や携帯電話などから回収したストックの利用へ転換した国づくりです。なぜなら、今、世界中で貴金属やレアメタルが奪い合いになってきています。ならばなんとか自国で資源を有効に循環しなければならないのです。
20世紀の日本は地中から資源を掘り起こすだけ掘り起し、この国を作ってきました。しかし、今後の国づくりには、蓄えた人工ストックを自国で回収・循環させていくシステムが必要です。
鉄を例に人工ストックを考えてみましょう。日本の鋼材の生産量は毎年1億トンあります。ちなみに世界全体では約16億トンです。我々の予測では、2050年の鉄鋼材の世界の需要は20億トンと試算しています。新興国のインフラのための鋼材の需要はまだまだあり、そういう国に鋼材を供給していかなきゃいけない。鉄鋼業は、今後もまだまだ伸びる可能性があるんです。
ちょっと話がそれてしまいました。鉄のストックの話に戻しましょう。ストックと言われてもピンとこない人のために言いますと、日本の鋼材のストックは、JRなどの鉄道の電車や線路。東京スカイツリー、六本木ヒルズ、東大の校舎などの建築物。橋、自動車…様々あります。鋼材を投入して過去に作ったインフラという社会基盤があるからこそ、今の豊かな生活があるわけです。
これまでに日本が蓄えてきた鋼材のストックは13億トンあります。ちなみに世界全体での鉄の総ストック量は160億トンです。これを1人当たりのストックに換算すると、日本は10トン/人。世界全体の平均のそれは3トン/人ですから、日本の鋼材ストック量は世界でもダントツに多いのです。
鉄以外でも、白金、銀、レアメタルのインジウムなどのストックは世界の消費平均を越えています。つまり日本には資源がないとよく言われますが、この都市鉱山を活用すれば、資源大国と呼ばれるにふさわしいポテンシャルを持っているということ。それが近年の都市鉱山研究でわかってきたのです。