第4回 CO2、80%削減を実現する技術と研究とは何か
さて今までの事態を整理しましょう。40年前、CO2を削減し省エネ大国を築いた奇跡の10年が日本にありました。その後80年代以降の20数年、低炭素社会に消極的でふがいない日本の姿がありました。東日本大震災を経て、日本人は少しまともになりました。私たちは、2050年にCO2を80%削減は可能とリアルな未来図を描けるようになりました。
この未来図はファンシー(空想)ではありません。次のような、裏付ける研究・技術があります。温暖化問題研究に重要な役割を果たしたのは、国際的な組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」です。2007年に出されたその報告書は、「人間活動から出る温室効果ガスがここ数十年の温度上昇を招いている」と明記し、大きな影響を世界に与えました。とりわけ「気候モデル」と呼ばれる数値計算が格段に進歩し、現実の地球の気候を再現できるようになりました。気候の安定化の検討には、日本の研究者が共同作成した気候変動のためのアジア太平洋気候統合モデル(AIM)があり、私の申し上げているCO2削減シナリオはこれによって裏打ちされています。
この未来図の重要な点は、CO2を削減しながら豊かな暮らしを送る技術的な裏づけがあることです。わかりやすく言えば、省エネの技術が格段に進歩した。10年前、省エネといえば、例えばクーラー。省エネ型のクーラーを部屋に設置しましたが、住む家の構造は隙間だらけでスカスカ。それでも省エネできたと満足しました。でも今や、住宅構造の密室化が進み、冷気も暖気も逃がさないという形の省エネ型高断熱住宅が主流になってきました。
そういうことがなぜできるようになったのか。隙間だらけの家にクーラーを付けて儲かるのは家電メーカー、電力会社です。住宅メーカーも隙間だらけの安い家を供給することで儲かりました。電気はどんどん使ってよいというメーカー側の暗黙の談合があったといえます。われわれ消費者側はそれに気づくようになったわけです。ですから今はまず高断熱の住宅、省エネ機器の組み合わせでの省電力がシステム的に考えられるようになりました。
照明だって、蛍光灯の取替えは面倒くさいなと思っていると、LEDが出てきました。省エネの取り組みが、メーカー側、消費者側の両方で始まっているんです。
車・交通システムでも省エネは驚くほど進んでいます。たとえば自動車は、昔はリッターあたり5、6キロがせいぜいでした。それが今や30キロ/リットル、60キロ/リットルが普通になってきているでしょう。世界の目標は100キロ/リットルです。ハイブリッドカーなんてと馬鹿にしていたのは1997年京都議定書のころです。だから目標を持ったときの日本の技術ってすごいですし、人間の知恵ってたいしたものと思うんです。