第3回 大転換期が始まった ~震災後の地球温暖化問題 メリット・デメリット
今は世界の大転換期だということが言えると思います。温暖化問題で言えば、これまでエネルギーなしに成長なしと世界中で考えてやってきたが、これからは、エネルギーを節約しながら成長するという認識に転換しなきゃならない。言い換えると、どの国であれエネルギーと経済成長とを分けて考える必要がある。それは21世紀の新しいモデルです。そういう時代に入ったということをキミたちにも認識してもらいたい。
日本は低炭素社会ということを世界に先駆け発信しながら、3.11で温暖化問題が吹っ飛んでしまった感があります。東日本大震災の2年前に鳩山首相が言った「2020年までにCO2を25%削減」なんてできっこないという風潮になりました。当面原子力が動かなくなるという事実がはっきりし、僕らの新しい計算でも5~9%の削減しかできないとなります。
しかし長期的に見るとプラス面も見え始めています。一番大きいのは、消費者サイドの変化です。夏の電力需要のピーク時に、みんなで減らそうとがんばったら減らせたじゃないか。減らせるということが誰の目にもわかったということが、すごいんです。
なぜならそれまで電力会社も産業界も、電気使用量を“減らす”ことは禁句だったわけです。ところが電力会社が切羽詰って「これ以上電気はありませんから節電してください」と言ったら、日本人はちゃんと対応しちゃった。これでようやく温暖化問題の研究者も、低炭素社会実現のために、まず省エネをやろうということが自信を持って言えるようになったのです。
長期的にもう一つの大きなプラス面は、まともな原子力見通しに基づく現実的なCO2削減シナリオの検討が可能になったことです。今までの日本の原子力計画は、イケイケドンドン型でまともじゃなかったんです。原子力の正確なエネルギーコスト計算もしていなかった。言うまでもなく廃棄物処理コストを入れてこなかったことです。
日本では原子力発電は低炭素化の切り札といわれてきました。ところが、原子力は出力調整の困難から火力発電と組み合わせでしか動かすことができず、全体で見るとまったくCO2を出さない電源とは言いがたいことがわかってきました。
逆に再生可能エネルギーが正面から論じられるようになりました。キミたちも聞いたことがあるでしょう、太陽光発電の固定価格買取制度がようやく始まりました。これは太陽光発電で個人が作った電力を倍近い値段で国が買い取るという話で、初期投資額は大きいけれど長期的に見れば非常に合理的な制度です。
この話は国に降り注ぐ太陽を日本のために使うのだから悪い話じゃない。それにみんなが合意したのだから、やっと日本人はまともになったということですね。
つづく
第4回 CO2、80%削減を実現する技術と研究とは何か
<前回の記事を読む>
第2回 「低炭素社会」は日本が世界に発した概念~80%削減も可能!