第5回 ついに、集積回路が人間の脳を超える!~コンピュータ集積回路の驚異の進歩
誕生からたった60年の歴史しか持たないにもかかわらず、どうして人工知能研究はこんなに進展し、盛り上がりを見せているのでしょうか。その背景には、コンピュータ集積回路の短期間での飛躍的向上が挙げられます。
まず1946年にできた世界初の電子計算機・エニアックが、どんなコンピュータだったかということから説明しましょう。みなさんのお父さん、お母さん世代の人なら、当時のテレビに内蔵されていた真空管を知っている人もいるかもしれません。真空管はコンピュータのデジタル回路の中で情報の単位である1か0、すなわちオンにするかオフかを決める重要なスイッチの役割を果たします。これは管と言うように大きい。エニヤックは、この真空管が1万7000本、体育館いっぱいに並ぶほど巨大なコンピュータでした。この場所をたくさん取ることに加えて難点は、真空管がすぐに切れてしまうこと。1万7000本の真空管のうちの何本かは毎日交換をしないといけなかった。だからこの世界初のコンピュータを運用するには、真空管を取り換えるだけのスタッフが常時数人必要だったそうです。
この真空管は、トランジスタに置き換わることでコンピュータの計算速度は急速に進展しました。トランジスタができたのはエニアック誕生の1年後。ちなみにソニーからトランジスタラジオが商品化されたのは1955年です。
さらにトランジスタは、現在、集積回路(LSI)に置き換わることによってコンピュータのサイズ・計算速度は飛躍的に進展しました。どれくらい進展したかというと、体育館いっぱいの大きさが必要だったコンピュータが、手のひらに収まるほどのサイズになりました。みなさんご存知のものにコンピュータに入っている中央制御装置(CPU)というものがあります。コンピュータの頭脳に相当します。1940年代、真空管は1万7000本のスイッチだったのに対し、5年前のCPUは14億個のスイッチが内蔵されるようになりました。トランジスタ・LSIの登場で、真空管の切れやすいという難点は克服され、超小型化し、スイッチ数の集積度は飛躍的に向上したのです。
2018年、みなさんが大学に入るころには、人間の脳と同じ規模の集積度のCPUができちゃうだろうと予測されています。それくらい単位面積当たりどれくらいスイッチを埋め込めるかという集積度は上昇したということです。
つまり、複雑なことを考える人間の脳のネットワークの質にまだ及びませんが、少なくとも量的な脳の集積度は、とうとう人間の脳に匹敵するようになったということです。