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第6回 空前の人工知能ブームのきっかけを作った学問、機械学習とは何か?~機械が自ら考え、答えを見つける
人工知能は今、あちこちで注目されています。テレビや新聞でも人工知能って言葉を聞かない日はないくらいです。2015年公開された、人工知能を持つロボットの映画『チャッピー』は人工知能の本質を衝いた映画です。確かに人間は知能というものを追い求めたい動物ですし、人工知能研究はまさにその夢をつかみ取ろうという学問だということがよくわかります。人工知能ブームは過去に1960年代と80年代に2度ブームらしきものはありました。でも1、2次ブームは、今回の第3次ブームに比べると、おもちゃのようなものと言っていいくらいです。
前置きが長くなりましたが、第3次人工知能ブームのきっかけを作った学問は、機械学習といいます。機械学習は、人工知能研究の1分野です。私の専門の学問分野です。
インターネットを使う君たちは、日常、機械学習のお世話になっています。例えばIT企業のオンラインショップをすると、知らない間に他のおすすめ商品も案内されるのに驚いた経験はあるはず。これは、購買履歴をもとに、ユーザーの嗜好・性別等を分析する機械学習の成果なんです。機械学習はいろんな予測に使われます。
2012年の大統領選でオバマさんは投票予測で機械学習を最大限利用しました。AKBの選挙でもどのアイドルがセンターを取るのか、機械学習で全部、予想しています。購買履歴からその人が誰に投票するのかを予測するわけです。そのほか、ゲームや医療応用の場面で、機械学習はたくさん使われています。
このことで重要なことは、人間の助力なしに、機械が自ら自律的に考え、答えを導き出すことです。コンピュータは学習する材料を集め、自ら考え、判断できるようになったのです。つまり機械学習とは、人工知能における研究課題にひとつで、人間が自然に行っている学習能力と同じ機能をコンピュータで実現しようとする技術のことです。
機械学習は人工知能研究の中でもちょっと異色です。どこが異色かというと、コンピュータの集積回路をより高度化させることで人間の脳に近づける方向で進化した、本来の人工知能研究に比べ、より実用的な研究ということです。
機械学習は、たくさんのデータを最大限利用する非常に実用的な方法で、自ら考える知的構造を作るという特色を持ちます。それによって、意味や概念まで踏み込んで学習できる仕組みが明らかになりつつあります。コンピュータ将棋がプロ棋士を負かした事件を見れば、機械学習の実力が理解できるでしょう。
これだけの膨大なデータを操ることのできる機械学習はビッグデータ時代にマッチしました。この機械学習を背景として、この1年で、この10~20年に起きた出来事を全部、吹っ飛ばして異次元世界に突入したようなインパクトをもたらしました。機械学習によって、かつてはSFの世界の話だったことが実現しつつあります。それゆえ人工知能の第3次ブームが巻き起こったのです。