哲学・倫理学

倫理

良い人生の「良い」とはどういうことか


佐藤岳詩先生

専修大学 文学部 哲学科(文学研究科 哲学専攻)

出会いの一冊

グッド・プレイス(ドラマ)

マイケル・シュア(制作)

アメリカのドラマです。生前、やりたい放題の自分勝手な人生を送っていた主人公が人違いで天国に送られてしまうところから物語は始まります。天国に相応しい善人でないことがばれたら地獄に送られてしまう。そこで彼女は天国で出会った倫理学の先生に、自分を良い人間にしてくれと頼みますが…。

主人公は天国でのたくさんの人(と人以外)との様々な出会いや経験を通じて、人として成長していきます。なぜ嘘をついてはいけないのか。多数の人を助けるために少数の人を犠牲にしても良いか。良いとか悪いとか、誰がどうやって決めるのか。

様々な倫理学の重要な問いが詰め込まれていて、それでいて決して説教臭いつまらないものではない、とても面白いドラマです。主人公と一緒に、皆さんも悩み、考え、答えを探してみてほしいと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

良い人生の「良い」とはどういうことか

どう生きるかを考える

皆さんの中には、有名になってお金をたくさん稼ぎたいという人もいれば、目立たなくても人の役に立ちたいという人もいるでしょう。多くの人と一緒に過ごしたい人もいれば、一人の時間に幸せを感じる人もいます。

様々な夢や個性を持った人たちが共に生きているこの世界で、どんなふうに生きればより良い人生を送ることができるのか、倫理学ではそんなことが研究されています。

「良い」は誰が決めるのか

とはいえ、良い生き方について考えていると、そもそも「良い」ってどういう意味なのか、という疑問も湧いてきます。良い生き方、良くない生き方は、誰が決めるのでしょうか。私たちは本当に良い生き方を目指さなければいけないのでしょうか。「良い」っていったい何なのでしょうか。

そもそもに遡って考える

もちろん、現に目の前で誰かがひどく困っている時に、そもそもどうしてその人を助けることが良いことなのか、良いってどういう意味なのか、などと悩んではいられません。

ですが、様々な研究を通じて、そこでの「良い」をそもそもにまで遡って考えることが、本当に誰かを助けるとはどういうことなのか、誰かを助けようと思える人と思えない人はどう違っているのかなどの理解につながっていることがわかってきました。

私は、そうした根本的なそもそもの問題と、現実の具体的な問題とをつなげて考えるための筋道を作る研究を行っています。皆さんも、より「良い」世界について、自分自身で考えてみてくれると嬉しいです。

学会のシンポジウムでスポーツにおける倫理についての研究発表をしています。
学会のシンポジウムでスポーツにおける倫理についての研究発表をしています。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

私の従事している倫理学の研究は、必ずしもSDGsに直接貢献するものではありません。ですが、そもそもどうして他人や人類、地球のことを気にかけなければならないのか、それが一人ひとりの人生にとってどういう意味を持つのかを問い直すことを通じて、個人が自分自身の問題としてSDGsの問題を捉え直すための基礎を作ることを目指しています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「メタ倫理学的観点から見た規範倫理学理論の再構築」

詳しくはこちら

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難しい議論をしていると話がこんがらかってくるので、皆の意見をホワイトボードにまとめながら進めます。
難しい議論をしていると話がこんがらかってくるので、皆の意見をホワイトボードにまとめながら進めます。
中高生におすすめ

ハーモニー

伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)

優れたSF作品はいつでも想像力を刺激して私たちの世界を広げてくれます。近未来のディストピアを経験することを通じて、私たちの自由の意味を考えてもらえればと思います。


スタートボタンを押してください

ケン・リュウ、桜坂洋、アンディ・ウィアーほか(創元SF文庫)

ビデオゲームをテーマにしたアンソロジーです。ゲーム世代の中高生の皆さんに、ゲームを通じて世界を変える可能性を感じてもらえればと思います。


それでも町は廻っている(漫画)

石黒正数(ヤングキングコミックス)

主人公の高校生と一緒に、身の周りの日常をSFしたり、ミステリーしたり、友情したり、ラブコメしたりして、世界を少しだけ別の視点から眺めるきっかけにしてもらえればと思います。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

ロボット工学。現代のロボット開発の発展、多様なロボットたちを見ていると、自分も作ってみたかったと思います。

Q2.熱中したゲームは?

『ゼノギアス』。ソイレントシステムなど、倫理の論点がたくさん含まれたSF作品です。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

バレーボール。9人制という、現在では希少なルールのバレーボールをやっていました。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

 スポーツ大会でのドーピング検査。授業でもよくこの時の話はしています。


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