設計工学・機械機能要素・トライボロジー

摩擦

竹を用いてプラスチックに負けない優れた摩擦材料を


竹市嘉紀先生

豊橋技術科学大学 工学部 機械工学課程(工学研究科 機械工学専攻)

出会いの一冊

摩擦への挑戦 -新幹線からハードディスクまで-

日本トライボロジー学会:編(コロナ社)

日常生活で摩擦を減らすというと油を挿す程度の簡単な作業をイメージすると思いますが、自動車や飛行機などの様々な機械では、摩擦を極限まで減らすために多様な機械部品が考えられ、またその性能向上がされてきました。その裏では多くの技術者や研究者による涙ぐましい開発努力があり、工業先進国の日本では世界に誇れる素晴らしい技術をたくさん生み出してきました。普段、ほとんどの人が気にもしない「摩擦」と戦うために、縁の下の力持ちとして挑戦し続けた人たちの裏話を知ることができます。

こんな研究で世界を変えよう!

竹を用いてプラスチックに負けない優れた摩擦材料を

摩擦によって生じる無駄を減らす

例えば歯車のように、機械は力を伝えるために部品同士が摩擦しながら動いていますが、摩擦によってエネルギーの無駄も生じます。摩擦を減らすために油などを使って滑らかに動かしますが、油が使えない場所や油の使用を減らしたい場所では摩擦係数の低いプラスチックを使っています。しかしSDGsの観点から石油から作られるプラスチックの使用量を減らさなくてはいけません。

増えすぎた竹が起こす課題

話は変わりますが、竹害という言葉を聞いたことはあるでしょうか。竹は繁殖力が強く、適切に整備しないと急速にその生存領域を広げ、他の植物に影響を及ぼしたり、害獣が住み着いて農作物を荒らしたりします。また、樹木と違って根が浅いため大雨の時に山の斜面で土砂崩れを引き起こす原因となり、このような問題を総合して竹害と呼びます。増えすぎた竹は伐採しますが、これを燃やしてしまうと二酸化炭素を大量に発生し、環境に良くありません。

竹害とプラスチック削減を一挙解決

私の研究グループでは竹の粉を原料とし、ここに鉛筆の芯の材料である黒鉛を混ぜることで、石油由来の材料を使わない摩擦材料の開発に取り組んでいます。

黒鉛の粉は非常に滑りやすい材料で、鉛筆で紙の上にスラスラと滑らかに字が書けるのは黒鉛のおかげです。竹自体は摩擦係数の低い材料ではないのですが、黒鉛の助けを借りることでプラスチック材料に負けない優れた摩擦材料にすることを目指しています。これにより竹害問題やプラスチック削減への貢献も期待できます。

上図:竹の粉を摩擦材料にするための研究において作成した試験片(左:竹粉末のみで成型した試験片・右:竹粉末と黒鉛を混合して成型した試験片)。これらの試験片を金属と擦り合わせることで、摩擦係数を計測したり、摩耗量を計測したりします。

下図:研究室で設計・製作した摩擦試験機の内部の様子。回転するテーブルの上に試験片を取り付け、上から金属の球を押し当てて、さらに上からおもりを載せます。テーブルが回転することで試験片と金属球との間で摩擦が発生し、そのときに金属球に働く摩擦力(動摩擦力)を計測します。
上図:竹の粉を摩擦材料にするための研究において作成した試験片(左:竹粉末のみで成型した試験片・右:竹粉末と黒鉛を混合して成型した試験片)。これらの試験片を金属と擦り合わせることで、摩擦係数を計測したり、摩耗量を計測したりします。

下図:研究室で設計・製作した摩擦試験機の内部の様子。回転するテーブルの上に試験片を取り付け、上から金属の球を押し当てて、さらに上からおもりを載せます。テーブルが回転することで試験片と金属球との間で摩擦が発生し、そのときに金属球に働く摩擦力(動摩擦力)を計測します。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「モリブデン酸銀のトライボケミカル反応による広温度域潤滑機構の解明と応用」

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学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等

(3) 航空機・航空機器

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 製造・施工

(3) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

自動車などで大量に利用されるベアリングや軸受部品などのメーカーで、新たな製品の設計開発に関わる仕事をしています。トライボロジーは機械工学の分野で学ぶ様々な学問の他、化学や生物の知識なども必要になることがあり、トライボロジーの知識を中心として、どんな学問でも臆せずに学ぼうとする学生が活躍しています。

先生の学部・学科は?

豊橋技術科学大学は全国の高専からの編入学生を多く受け入れ、全学生の約8割が高専出身者です。ものづくりに対する意欲が高く、自分の研究に必要な部品や装置も自分で設計して作ろうという雰囲気が強いです。このような環境のため、普通高校出身の学生も卒業する頃にはものづくりの経験値や能力が上がっている人が多いように思います。このことは学生が就職する先の企業の方に好評で、就職先でも学生時代の経験が生かされるようです。

学生の皆さんは色々と工夫し、試行錯誤しながら実験をしています。最初はわからないことだらけですが、先輩に教えてもらいながら一人前になっていき、自分なりのアイディアを実験や研究活動に反映させていきます。
学生の皆さんは色々と工夫し、試行錯誤しながら実験をしています。最初はわからないことだらけですが、先輩に教えてもらいながら一人前になっていき、自分なりのアイディアを実験や研究活動に反映させていきます。
先生の研究に挑戦しよう!

プラスチックがない時代は機械部品は金属で作られており、その摩擦面は油やグリースで潤滑していました。プラスチックは金属と比べて摩擦係数が低いことが多いので、最近では油を使いたくないような摩擦部に多く使われています。しかし、プラスチックであれば何でも摩擦係数が低いというわけではありません。身近なプラスチックを金属を相手に擦ってみて、どのようなプラスチックが滑りやすいか調べてみましょう。

中高生におすすめ

いまを生きる(Dead Poets Society)

主演:ロビン・ウィリアムズ

何でも鵜呑みにせず、自分で考え、自分なりの答えを探し続けることの大切さというものがテーマのひとつになっています。研究の世界でもやはり同じようなことが言えると思います。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ドイツおよびその周辺:ビールがおいしい。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

BON JOVI:お気に入りは「I Believe」

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption)

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

魚釣り・うどん作り

Q5.好きな言葉は?

凧が一番高く上がるのは風に向かっている時である。風に流されている時ではない。(「逆境のときほど成長するチャンスである」の意)by ウィンストン・チャーチル