応用物性

電子物性

デザイン性の高い新しい太陽電池材料の電子物性を探索


谷口耕治先生

東京科学大学 理学院 化学系

出会いの一冊

トポロジカル物質とは何か

長谷川修司(ブルーバックス)

私たちが研究している電子物性という分野は、現代社会を支える半導体を理解するために欠かせない、とても重要な研究領域です。ところが、高校までの理科の授業ではほとんど学ぶ機会がありません。その理由のひとつは、この分野が大学で初めて学ぶ量子力学を基礎としているからです。また宇宙や素粒子の分野には、一般の人の関心を引く分野にはわかりやすい入門書が数多くある一方で、電子物性をやさしく紹介する本は多くありません。

ここで紹介する書籍は、新しい物質として注目される「トポロジカル物質」をテーマにしていますが、電子物性の基礎から、身近な言葉でわかりやすく説明されています。電子物性という分野の存在を中高生のみなさんに知ってもらい、「学んでみたい」と思って大学に進学してくれる学生さんが増えればと願っています。

こんな研究で世界を変えよう!

デザイン性の高い新しい太陽電池材料の電子物性を探索

有機物と無機物を併せ持つハイブリッド半導体

物質は原子から成り立っていますが、電気伝導性や光学特性、磁性といった性質は、原子を構成する要素の一部にすぎない電子の性質(電子物性)によってほぼ決まります。私たちは、有機物と無機物の両方を構成要素に持つ「有機・無機ハイブリッド化合物」を対象に、新しい電子物性の探索を進めています。

中でも注目しているのが「有機・無機ハイブリッドペロブスカイト」と呼ばれる半導体です。これはシリコンに匹敵する優れた光エレクトロニクス特性を示すだけでなく、塗って膜状にできるといった有機物的な特徴も併せ持ち、デザイン性の高い新しい太陽電池材料として脚光を浴びています。

「キラリティ」に着目した独自のアプローチ

私たちは、このハイブリッド半導体の有機部分に「キラリティ(右手と左手の鏡像関係)」を導入するという独自のアプローチで、物性開拓に取り組んでいます。例えば、キラリティが物質に非対称性をもたらす性質を利用して、外部電圧を加えなくても単一の物質から自発的に光電流が生じる「バルク光起電力効果」(太陽電池の性質)を実現できることを明らかにしてきました(通常は複数の物質を貼り合わせて非対称な状況を作らないと太陽電池になりません)。

さらに最近では、キラルな物質に電流を流すと、磁石ではないにもかかわらず電子のスピン(微小な磁石の性質)を選択的に取り出せるといった面白い現象も見出しています。私たちはこうした成果を基盤に、将来教科書に載るような電子物性の発見を目指し、研究を続けています。

光電流を測定する装置です。自分で光学素子を組み合わせて組みたてました。
光電流を測定する装置です。自分で光学素子を組み合わせて組みたてました。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

元々、私は無機物の磁性の研究を行っていたのですが、以前所属していた研究室の都合で、全くそれまでと異なるリチウムイオン電池の研究をしなければならなくなりました。この時は、素人の分野でゼロから研究を立ち上げることになり、かなり苦労したのですが、その中で物質の隙間にイオンを入れて新しい機能を引き出すという着想を得ました。

その後この着想を活かして、電池でイオン挿入を制御して磁性をコントロールするという研究を行ったのですが、その際、丸いリチウムイオンではなく、複雑な構造を持たせられる有機物イオンを使えば、より高度な機能制御もできるのではないかと考えたのが、現在の研究テーマに至ったきっかけです。

物性測定のために自分で作った結晶です。(初めて大きな結晶が作れたときには感動します。)
物性測定のために自分で作った結晶です。(初めて大きな結晶が作れたときには感動します。)
先生の研究報告(論文など)を見てみよう
先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 半導体・電子部品・デバイス

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

東京科学大学は、世界的にもトップクラスの理系専門大学であり、各分野で国際的に活躍する研究者が数多く在籍しています。私の所属する化学系には、物理化学、有機化学、無機・分析化学の専門家が揃っており、物質の多様な側面から物性研究を力強く推進できる環境が整っています。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

二重らせん

ジェームス.D・ワトソン(ブルーバックス)

DNAが二重らせん構造をとることは、現在では当たり前のこととして知られていますが、どのような経緯でこの歴史的発見に至ったのか、発見者の一人によりその過程が活き活きと書かれています。自然科学の研究で何かを見つけたときのワクワク感を垣間見ることができておすすめです。


ニーチェ入門

竹田青嗣(ちくま新書)

学生の頃、哲学ってなんとなく格好良いなと、思いつつ、有名な本を眺めてもチンプンカンプンでした。そんなとき、気まぐれで手に取ったところ、平易な言葉で書かれていて、初めて楽しんで読めた哲学の本でした。

難解な言葉遊びではなく、どのような姿勢で人間は生きるべきか、という熱い哲学(思想?)が解説されています。タイトルから受ける退屈そうな予想を裏切って面白かった本です。


量子コンピュータが人工知能を加速する

西森秀稔、大関真之(日経BP)

最近、よく耳にする量子コンピュータに関しての啓蒙書です。量子コンピュータというのは、基礎研究だけの世界かと思いきや、ベンチャー企業により量子アニーリングという原理を用いた量子コンピュータが製品化されており、既に販売されていたなど、興味深いエピソードが色々書かれています。

量子コンピュータの何が面白いのかを伝えることに主眼が置かれていて読みやすいので、最先端の科学のトピックスに興味があって、まずはどんなものか知ってみたいという人におすすめの本です。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

物理学:化学系の出身で物理の学習は独学なので、体系的な講義を受けて学習してみたい。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

和楽器バンド

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

バック・トゥ・ザ・フューチャー:初めてきちんと見たハリウッド映画

Q4.大学時代の部活・サークルは?

洋弓部

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子育て