ゲノム科学を活用して、寒さに強い、おいしいビワを作る
初夏の果物ビワは寒害で減産
マスコミでは、地球の温暖化が進行していると報道されるのに寒害被害?と思われる方も多いのではないでしょうか。初夏を彩るビワは、高値で取引されている果物であるにも関わらず、生産量が少ない品目の1つであり、また生産量も安定していません。
その理由は秋冬期に開花するビワは、厳冬期に幼果で過ごすため、寒害に遭うと大幅な生産量の減少を引き起こすからです。ビワは幼果時に一定温度以下にさらされると胚が壊死し、その後、生育が完全に止まり果実が死んでしまうのです。
耐寒性形質を有するビワ属を発見
ビワの日本一の産地である長崎県では、数年間隔で寒害被害により出荷量が激減している年度があります。また日本第2位の生産量の千葉県でも慢性的な寒害被害を同様に受けており、安定したビワ生産において耐寒性品種の育成は喫緊の克服すべき課題です。
そこで、我々が世界で初めて見出した耐寒性形質を有するビワ属 E. deflexaの交雑集団の系統の幾つかは、その時の寒害被害を回避できたので、その特徴を既存の品種に取り入れる品種改良を構想しましたが、 E. deflexaは、もともと庭木・台木などで利用される植物で、果実形質が非常に劣り(果実がちっちゃくて不味い)、優良品種との戻し交雑を繰り返す必要がありました。
そこで、先進的なゲノム科学を活用して関連遺伝子領域の特定を図り、効率的に有用形質のみが組換えされた系統をゲノムレベルで選抜し、耐寒性を備えた果実有望品種の育成を目指しています。
「新規耐寒性形質を見出したビワ属遺伝資源を育種利用して「寒さに強いビワ」を創る」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 食品・食料品・飲料品
(3) 農業、林業、水産業
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 品質管理・評価
(3) その他
私の研究室(アグリ資源開発学研究室)では世界で佐賀大学にしかない遺伝資源コレクションを保存しています。また、広大な圃場を利用できるので、世の中に存在しない新しい品種を生み出す研究を行うことができます。
果樹研究のバイオインフォマティクス
監修・編集:藤井浩(農研機構果樹研究所)
果樹研究を解りやすく紹介されている書物です。読みたい方は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構のホームページより無料で入手することができます。
高校生物で学習した知識が作物の品種改良にどの様に活かされているのかを知る機会となるでしょう!
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