水素を1/1000の体積に! 再生可能エネルギーを水素に変えて長期貯蔵
気体を液体や固体に変えてコンパクトに
水素は、再生可能エネルギーなどの様々な一次エネルギーから製造でき、燃料電池などから電気や熱を効率よく取り出せます。
再生可能エネルギーは、水電解で水素に変換することで、二次エネルギーとして大量輸送・長期貯蔵が可能です。
水素は常温では気体で存在するため、化学物質に変換して液体状にしたり、水素原子として固体状にしたりすることでコンパクトに水素を貯蔵できます。
水素を速くたくさん貯めるには
私は、初期の研究では、水素を1/1000の体積に閉じ込めて貯められる水素貯蔵材料の研究を主に進めていました。
その中でもマグネシウム(Mg)に注目しました。MgはMgH2という水素化物を作って、水素を貯蔵できます。
質量当たりや体積当たりで多量の水素を貯められるのですが、水素を吸蔵したり・放出したりする反応の速さが遅いという欠点がありました。表面が不活性なのが要因なので、触媒をボールミリング法でMgH2粒子表面にナノレベルで均一に分散させることで、劇的に反応の速さを改善させることができました。
水素貯蔵タンクの開発も
現在では、この機能が改善された材料を上手く水素貯蔵タンクに搭載する方法や燃料電池と組み合わせて使う時のプロセスやシステム研究も同時に行っています。
固体の水素貯蔵材料は粉末で、水素吸蔵・放出するときに膨張・収縮して微粉化し、タンクの中で固まってしまうということが起きます。この場合には、タンクの中で水素ガスとの接触が悪くなったり、反応に伴って出てくる熱を上手く逃がすことができなくなって、タンクの性能が悪くなってしまいます。
そこで、粉末を炭素材料や高分子で固まりの形状にして充填する方法、熱を逃がしやすいタンク構造などの開発を行っています。
理系に興味があったのですが、大学で数学か理科のどちらに進むかを高校時代は迷っていました。大学2年生から専門を選んで良い学部に進みました。
大学1年生の時に燃料電池や水素貯蔵材料を紹介している授業を聞いて、それまでは物理・化学は自然の原理を説明する道具だと思っていたのですが、新しい材料やエネルギーシステムを作ることで世の中に役に立つようなことができるかもしれないと思いました。それがきっかけで、物理や化学を学ぶコースに進み、水素貯蔵材料を研究している研究室に入りました。
先進理工学部応用化学科では、化学の中でも特に「役立つ化学・役立てる化学」の実践を目指しています。
世界をリードするバラエティーに富んだ教員がおり、「有機合成化学、高分子化学、応用生物化学、化学工学、応用物理化学、触媒化学、無機合成化学、ものづくり工学」とたくさんの分野があります。入学してからの授業でこれらの分野について学び、4年生では興味のある分野を選んで研究に取り組めます。