リハビリテーション科学・福祉工学

少し動くと息切れする、肺の悪い人へのリハビリテーション研究


田平一行 先生

畿央大学 健康科学部 理学療法学科/健康科学研究科 健康科学専攻

どんなことを研究していますか?

肺の病気にかかると、酸素を取り込んだり、二酸化炭素をはき出したりする呼吸をうまくできなくなってしまい、身体の中に酸素が足りない状態になってしまいます。そうなると身体を少し動かしても、息切れや息苦しさが出てしまいます。治療としては、吸入薬や飲み薬などが用いられますが、リハビリテーションも重要な治療法です。

咳をしたときの気流を測定し、問題点をみつける

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私は、肺の悪い人のリハビリを専門としています。肺の悪い人は、痰が出ることが多く、時にはこれをつまらせて亡くなってしまう方もいます。私は咳をしたときの気流を測定することで、何が問題で咳が弱くなっているのかを判定する研究をしています。これが完成すると咳の流量波形を見るだけで、筋力、肺活量、声帯、気道のどの部分が問題であるか判定でき、どのように治療やリハビリをすればよいかがわかるようになります。

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呼吸困難感に関する講演をする田平先生

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→医療系
  • ●主な職種は→理学療法士
  • ●業務の特徴は→肺や心臓の病気のリハビリ
分野はどう活かされる?

仕事(理学療法)自体が研究分野になっています。

先生から、ひとこと

患者さんを元気にするための仕事や研究は楽しい!

先生の学部・学科はどんなとこ

本学は、専門分野の学会(日本理学療法学術大会など)での学会発表や雑誌への投稿など、国内で最も学術活動が盛んな大学の1つです。分野として、神経リハビリテーションは、研究センターを有しており、学内では最も所属する研究者が多い分野です。

私の専門分野である呼吸リハビリテーションは、教員としては2名ですが、大学院の卒業生(19名)と定期的に勉強会を行い、学会・論文も共同で発表しています。その他に、ラットやマウスなどの動物実験を専門とする教員や物理療法、地域の介護予防、スポーツ、徒手療法などを専門とする教員がおり、各々がその分野で学術的にも活躍しています。

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第9回呼吸・循環リハビリテーション研究大会会場にて

先生の研究に挑戦しよう

ストローから息を吸ったり吐いたりすると息苦しくなり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の息苦しさを経験できるとされています。そのストローの太さを変えたり、何本かまとめて束にしたりすることで抵抗を変化させ、息苦しさの程度を変えてみてください。その時の抵抗や気流を測ると、COPDのどの程度の重症度になるかを判定することが可能です。

興味がわいたら~先生おすすめ本

一歩先ゆく呼吸リハビリテーション

神津玲:監

呼吸リハビリテーションののことがよくわかる漫画。新米の理学療法士が呼吸リハビリテーションに関わるようになり、先輩や集中治療室(ICU)の看護師の指導を受けながら成長していく姿を通して、我々の理解も進むようになっている。各テーマについての解説文やDVD動画もあるため、理解しやすい。 (田平一行:共著/メディカ出版)


メスよ輝け!! 外科医・当麻鉄彦

大鐘稔彦:原作

外科医の当麻鉄彦が主人公の漫画。スーパーマンではないが、悩みながら患者にベストの医療を提供するために苦闘する、著者の理想像を描いている。天皇陛下の心臓手術をされた天野先生もこの本の読者で、当麻医師に負けないように頑張ったとの話もある。 (やまだ哲太:著/集英社文庫(コミック版))


ジェネラル・ルージュの凱旋

海堂尊

『チームバチスタの栄光』の作者である海堂尊氏による医療小説。急性期医療のやりがいや矛盾などを面白く描いている。医療現場の詳細を綿密な取材をもとにリアルに描きつつ、テンポよく展開するストーリーからも目が離せない。 (宝島社文庫)


コペルニクスな呼吸生理

北岡裕子

従来の呼吸生理の問題点を指摘し、流体力学に基づいた生理学を提唱している。難解に感じられるかもしれないが、理数系の好きな人なら読み解けるかも知れない。付録にDVDもあり、視覚的にもイメージしやすく理解の助けとなるだろう。 (氏家良人:監/克誠堂出版)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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