木材は、石油などの化石資源とは異なり、再生可能なバイオマス資源です。上手に使えば半永久的に手に入れることができます。また、木材は光合成により形作られるわけですから、地球温暖化の原因である二酸化炭素をため込んでいると言えます。言い換えると、家や家具などに木材をたくさん使えば使うほど、大気中の二酸化炭素を削減できることになり、これからの我々の未来を切り拓く未来型の資源と言えます。
スマートフォンの部品、ペットボトルなどが木材から作られる日も
実は、最近、プラスチックや自動車用燃料など、現在我々が使っている石油化学製品のほぼすべてを、木材からも作ることができるようになってきています。私は、木質バイオマス(木材)を、イオン液体と呼ばれる特殊な液体で、化学的に処理することで、自動車用燃料、プラスチック、医薬品、樹脂などの原料となる様々な化学物質を生み出すことに取り組んでいます。
石油をはじめとする化石資源はいつかは枯渇する資源です。これに対して木材は、我々が適切に植えて育て続ければ、いくらでも生産が可能な資源なのです。木材から、様々な化学物質を生み出すことができるようになれば、自動車やスマートフォンの部品、ペットボトルなどが木材から作られる日も、そう遠くない未来と想像できます。
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「8.食・農・動植物」の「27.森林科学、林産資源、バイオマス」
一般的な傾向は?
●主な業種は→化学メーカー、製紙メーカー、印刷業
●主な職種は→研究開発、製品開発
●業務の特徴は→新しい製品の開発、生産過程における生産管理
分野はどう活かされる?
研究室で培った化学的な研究知識を生かして、化学メーカーでの新しい化学製品に関する研究開発や、印刷会社での塗料に関する研究開発などに携わっています。また、木材化学に関する知識は、製紙メーカーでの製品開発に活かされています。
京都府立大学生命環境科学部森林科学科では、木質科学について生物、物理、化学など様々な視点から、総合的に学ぶことができます。生物分野では、道管や仮道管などの木材細胞構造に関して針葉樹と広葉樹での違いなどを学びます。
物理分野では、木材の曲げ、圧縮、引っ張りなどの強度や変形加工などを学びます。化学分野では、木材に含まれている化学成分の抽出や各種化学反応を用いたバイオ材料、バイオ燃料などの創製などについて学びます。さらに木材を利用することが、地球温暖化防止につながることなど、環境問題との関連についても深く学ぶことができます。
地球環境を守るため、そして人類の未来のために、石油、石炭などを使わない世界の実現が必要です。木材はそれを担うことのできる材料の一つです。人類の歴史とともに使われてきた木材という古い材料に21世紀のテクノロジーを用いて、ぜひ皆さんと一緒に未来を築く新しい材料を作りたいと思っています。
【テーマ例】
・木材からのプラスチック生産
・木材からの自動車用バイオ燃料の生産
・木材からのバニリン(バニラの香り成分)生産
・木材の化学反応における、木材細胞壁の破壊に関する顕微鏡観察