国際法学

国際組織の責任

WHOの対応の遅れ、法的な責任は? 国際組織に関する国際法を考える


佐俣紀仁先生

武蔵野大学 法学部 法律学科(法学研究科)

出会いの一冊

入門 人間の安全保障 恐怖と欠乏からの自由を求めて

長有紀枝(中公新書)

国際社会にあるさまざまな問題(紛争、飢餓、貧困)の現状と、それに対して国際社会がどんな取り組みをしてきたのかを概説する本です。

国際法そのものに焦点が当てられた本ではありませんが、「戦争」の法的規制等をはじめ、国際法の重要問題について導入的な説明があります。

国際法だけでなく、広く国際関係に関心のある方にお読みいただければ、『もっと知りたい』というテーマが見つかるはずです。

こんな研究で世界を変えよう!

WHOの対応の遅れ、法的な責任は? 国際組織に関する国際法を考える

国連やWHOの活動に関わる法

私の専門は国際法です。国際法は、国際社会で使われる法のことです。中でも特に、国際組織(国際機関、国際機構とも言います)に関わる法に関心を持っています。

国際組織は、複数の国家が集まって作られていますが、それらの国家から独立した存在として活動します。国連や世界保健機関(WHO)等が有名です。しかしそれ以外にも多数あります。

被害に対して誰がどんな責任を負うのか

国際組織は人類にとって利益(平和、健康etc)をもたらすために作られました。ですが、国際組織の活動が期待通りの成果をもたらさないことがしばしばあります。例えば最近ですと、COVID-19の蔓延に対応が遅れたという理由で、WHOが厳しく批判されています。

では、国際組織が好ましくない結果を生じさせた場合、誰が、どんな後始末をすべきなのでしょうか。例えば、WHOの対応の遅れで生じた被害についてはどうでしょうか?

国際法の観点からは、このような問題には、「遅れ」は違法なのか(法に違反するのか)、そしてその違反は誰の行為なのかを考えて、法的な責任(金銭賠償や謝罪の義務)を負わせるべき「誰か」を判断します。

原因となる行為を特定できるか?そもそもその行為は違法といえるのか?

しかし、上記に見たようなWHOの対応の遅れの場合、そもそも「違法だ」と判断する根拠になる法があるのかどうか、意見が分かれています。また、誰の行為が決定的な原因なのかも難しい問題です。WHOの活動は、WHOと複数の加盟国(と場合によってはそれ以外の企業等も)の行為が複雑に入り乱れているからです。

実は、こうした状況は、WHO以外の他の国際組織にも多かれ少なかれ当てはまります。今日の国際法は、国際組織の活動についてまだ十分なルールを持っていないのかもしれません。私は、国際法がカバーできている部分とそうでない部分を正確に理解して、国際組織の活動をよりよい方向へ導くためのルールや仕組みを考える糸口を得ようとしています。

ポーランド・ワルシャワ大学での国際ワークショップにて
ポーランド・ワルシャワ大学での国際ワークショップにて
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学1年生の春休みに、タイ北部の山奥で、少数民族居住山村で1ヶ月弱暮らす経験をしました。それをきっかけに、漠然と国際関係に関わることを勉強したいと思いました。2年生から法学部の「国際」がつく授業を片っ端から履修しているとき、最初に出会ったのが国際法の講義です。国際社会全体を扱う大きなスケール感と、一言一句の解釈を争う法学らしい厳密さ、この両方が勉強できるというのはお得だし、面白いな、と思いました。

海外からのゲスト講師を招いてのSDGsに関する特別講義にて
海外からのゲスト講師を招いてのSDGsに関する特別講義にて
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「国際組織の責任法理の再検討―国際組織責任条文への批判と採択後の展開を踏まえて」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(3) 不動産、賃貸・リース

◆主な職種

(1) 営業、営業企画、事業統括

(2) 総務

(3) 一般・営業事務

◆学んだことはどう生きる?

卒業生の進路は、ゼネコン、営業、販売、編集、公務員等、非常にバリエーション豊かです。武蔵野大学では卒業論文の作成が必須です。卒業論文の執筆は、2年間のゼミでの活動の総括である以上に、課題発見・解決能力、マネージメント能力、表現能力、論理的思考、プレゼン能力等が問われる一つの大きな「プロジェクト」です。一人一人がプロジェクトの責任者として卒論を書くことで、社会で必要な能力を着実に涵養して、様々な分野で活躍しています。

先生の学部・学科は?

武蔵野大学の法学部法律学科では、法律学の土台となる民事法分野を早い段階で網羅的に勉強します(「民事基本法先行集中学習カリキュラム」)。このカリキュラムのおかげで、法学を学ぶために必要な足腰が早い段階で鍛えられます。じっくり民事法を学んだ成果を活かして、国際法ゼミ生も、民法との対比から国際法に関する非常に鋭い質問をぶつけてくれます。他にも、ビジネス法務分野について、第一線の研究者、実務家等による幅広い科目が提供されているのも特徴です。

ゼミの学生さん達との伊豆合宿の一コマ(SAMATAの「S」サインです)。他大学との研究教育の交流も活発に行なっています。
ゼミの学生さん達との伊豆合宿の一コマ(SAMATAの「S」サインです)。他大学との研究教育の交流も活発に行なっています。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

Learning English, International Law Explainers

BBC

国際法を素材にしているBBCの英語教材です。「国際法とは何か?」「国際法はどうやって作られるのか?」「国連の役割とは?」「国際法は国内の法とどう違うのか?」という根本的な問題を、短い動画で説明しています。もし英語に自信がなければ自動翻訳を使ってもいいでしょう。

これを見て「よくわからないな」とか「納得できないな」と思った方は、その瞬間に、国際法の勉強の最高のスタートを切っています。ぜひ大学で国際法の教員に質問をしてみてください。

より高度なものには同じくBBCで「宇宙と法」や「水と国際法」のようなテーマ別に掘り下げた教材があります。
https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/international_law_space

[webサイトへ]


海のグレートジャーニーと若者たち 4700キロの気づきの旅

関野吉晴(武蔵野美術大学出版局)

太古の昔、アフリカに生まれた人類は、住む地域を徐々に世界中に拡大していきました。この過程は「グレートジャーニー」と呼ばれます。グレートジャーニーの中で、太古の人々は、大陸から黒潮に乗って日本にたどり着きました。日本人の祖先と同じものと使って、同じものを作り、『海のグレートジャーニー』の一部を再現するというのが、この本です。

「グレートジャーニー」そのものを主題とした関野さんの図書や、Youtubeチャンネルもおすすめです。


語学の天才まで1億光年

高野秀行(集英社インターナショナル)

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」をモットーにする高野さんは、都合25言語以上を勉強してきました。言語を勉強する(ちょっと風変わりかもしれない)方法、言語を学ぶと見えてくる新しい世界、一見達成困難な目標への取り組み方等を教えてくれます。高野さんの他の本もおすすめです。


世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる

岡根谷実里(青幻舎)

私は世界中の料理が好きです。食べることも、作ることも。この本を読んで、なぜ、料理が好きなのか、わかったような気がしました。

この本は、岡根谷さんが世界中の台所で人々と語り、料理し、食べた記録です。料理という視点から、その地域の人々の生活社会そのものを考えるきっかけを与えてくれています。レシピが充実しているのも嬉しいポイントです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

生き物や食べ物に関心があるので、農学部か理学部でしょうか。歴史や宗教も勉強したいので、文学部もいいですね。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

奥田民生とユニコーン。『与える男』『自転車泥棒』。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

バットマンシリーズが好きです。特に『ジョーカー』と『ダークナイト』は何度も観ています。最近は「A24」製作の映画、特にホラーに夢中です。

Q4.大学時代の部活・サークルは?

定食屋の皿洗い。賄いが美味しくて、ひどい偏食を克服するきっかけとなりました。


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ