認知科学

ヒトらしさの進化

チンパンジーやボノボの協力行動に、「ヒトらしさ」を探る


山本真也先生

京都大学 理学研究科 生物科学専攻(高等研究院/野生動物研究センター)

先生のフィールドはこの本から

心の進化を語ろう 比較認知科学からの人間探究

松沢哲郎(岩波書店)

第1部では、編者の松沢哲郎が比較認知科学誕生への道のりをたどります。第2・3部では、雑誌『科学』の連載「ちびっこチンパンジーと仲間たち」と、霊長類学70年とアイ・プロジェクト40年を記念して企画された特集が収録されています。様々な研究者が、比較認知科学の最前線をわかりやすい言葉で紹介しています。

世界を変える研究はこれ!

チンパンジーやボノボの協力行動に、「ヒトらしさ」を探る

熱帯雨林で観察、飼育して認知実験も

人間とは何か。ヒトにもっとも近縁なチンパンジーやボノボをはじめとする様々な動物との比較を通して、「ヒトらしさ」の進化の解明に取り組んでいます。アフリカの熱帯雨林で観察もすれば、飼育下での認知実験もします。動物が何を考え、どのように暮らしているのかを理解するため、様々なアプローチを取っています。

自発的な手助けや分かち合いはヒト特有

これまで、文化や協力行動はヒト特有のものだと考えられてきました。しかし、チンパンジーやボノボもこのような行動を見せることがわかってきました。チンパンジーも相手から求められれば手助けします。ボノボは、日常的に仲間と果実を分け合って暮らしています。

しかし、どちらも、自発的に手助けしたり、自ら食べ物を差し出したりといった行動はほとんど見られません。ついおせっかいをしてしまいがちなヒトとの大きな違いです。また、ヒトは、技術や知識を積極的に他者に教えますが、このような教育もヒト以外では非常に稀です。このように、高度な文明や協力社会を支える「ヒトらしさ」が、比較認知科学を通して少しずつ明らかになってきています。

ウマやイヌなどの伴侶動物も研究

最近は、野生動物だけでなく、ウマやイヌといった伴侶動物にも対象を広げて研究を進めています。ヒトは、様々な動物と密接な関係を持って暮らしてきました。お互いに良い影響を与え合えれば良いですが、必ずしも良好な関係だけとは限りません。環境破壊による野生動物の絶滅や飼育動物の遺棄・虐待など、問題は山積みです。動物とのより良い共生社会を目指して、少しでも研究を役立てられればと思っています。

野生ボノボ調査基地にて、現地協力者たちのとの集合写真。左端が私。(2013年、コンゴ民主共和国ワンバ村にてHeungjin Ryu 撮影)
ラグビーボールほどの大きさの果物を大事そうに抱える野生ボノボ。このような果物を日常的に個体間で分配している。(2013年、コンゴ民主共和国ワンバ村にて撮影)
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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動物の研究者にとって、環境破壊は大きな問題です。実際、私が研究しているチンパンジーやボノボは、絶滅の危機に瀕しています。人間の経済活動による森林伐採やブッシュミートトレード(野生動物の狩猟・肉の売買)などが主な脅威です。

チンパンジーやボノボが住むアフリカの国々には貧困にあえぐ人々も多く、ただ単に環境保全の重要性を主張しても解決になりません。現地住民と協同で持続可能な対策を考えないといけません。

解決策のひとつとして有力視されているのがエコツーリズムです。チンパンジーやボノボの森を守り、かつ現地経済の活性化にもつながるような取り組みができればwin-winの関係を築けるでしょう。そのためには、まずチンパンジー・ボノボのことをよく知ってもらうことが大切です。

知れば知るほど、彼らのことをもっと知りたくなるはずです。研究を通してチンパンジー・ボノボの魅力を発信すると同時に、彼らの置かれた現状について、人々に関心を持ってもらえるよう伝えていきたいと思っています。

きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

小さい時から動物が好きでした。マンション暮らしだったので犬や猫は飼えませんでしたが、ベランダでトカゲを飼ったり、家族でよく山登りに行ったりしていました。その延長で大学時代には理学部で生物を勉強しましたが、同時に、バックパッカーとして様々な国をめぐりました。

土地ごとに違う文化に魅惑されるとともに、旅を通して興味を持ったのは、ヒトとしての共通点です。「ヒトらしさ」とは何だろう。この問いが、子供の時の夢と結びつき、今の研究につながっています。ヒトは助け合うこともあれば殺し合うこともあります。動物も同じです。いがみ合わずに協力・共存するにはどうすればよいのか。動物たちの社会からヒントを得られるのではないかと考えています。

◆大学時代

いろいろな国を旅しました。特に印象に残っている国のひとつがイエメンです。現在、内戦の影響で「最悪の人道危機」に見舞われています。私が訪れた2003年は、内戦こそ落ち着いていましたが、日本のニュースに流れるイエメンといえばテロ関係ばかりでした。しかし、実際に訪れてみると、非常にフレンドリーで、旅人を暖かく迎えいれてくれました。自分の目で見て考えることの重要さを学んだ旅でもありました。

◆出身高校は?

東大寺学園高校

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!



山本真也先生 の研究・研究室を見てみよう
ウマとの写真。右が私。(2017年、神戸大にて撮影)
中高生におススメ

旅をする木

星野道夫(文春文庫)

アラスカに身を置き、雄大な自然に暮らす動物や人々の様子をとらえた写真家によるエッセイ。仕事の内容や手段は異なれども、自然の素晴らしさを伝える者として、星野道夫さんの仕事や考え方には大きな影響を受け、今もあこがれています。


人間の土地

サン=テグジュペリ、訳:堀口大學(新潮文庫)

20世紀初頭、まだ空を飛ぶということが危険極まりなかった時代、航空路線開拓黎明期のパイロットとして著者は活躍しました。当時、空から地上を見るという鳥の視点を持った人間は少なく、この経験をもとに、独自の視点からサン=テグジュペリは人間を考察しました。視点を変えることで、違ったものが見えてきます。手段も対象も異なりますが、私が比較認知科学でしようとしていることも、似ているのかもしれません。


深夜特急

沢木耕太郎(新潮文庫)

とにかく面白いです。バックパッカーのバイブル的小説。ぜひ若いうちに海外に飛び出して欲しいです。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ニュージーランド。自然豊かな国で、動物に囲まれ、自家用セスナに乗りながら暮らしたいです。自家用パイロットのライセンスを取るのが夢です。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

トム・ウェイツ。このダミ声にはまりました。ひとつのジャンルに収まらないというか、「トム・ウェイツ」という独自のジャンルを確立していると思います。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『世界最速のインディアン』。こんなおっさんになりたいなぁと思う映画です。タイトルからはなかなか想像できない感動もの。

Q4.大学時代の部活・サークルは?

軽音楽部JAZZ系。高校の時にアルバイトして買ったアルトサックスが眠っていたので、音感もリズム感もなかったですが、思い切って始めました。あまりうまくはなりませんでしたが。でも、音楽の幅が広がり、音楽鑑賞は今でも趣味として楽しんでいます。

Q5.研究以外で楽しいことは?

犬を連れて山登り・キャンプ。


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