記述問題や口述試験によるオーストリアの大学入試
資格を得れば60歳で大学入学も可能
私はドイツやオーストリアの大学入試改革について研究しています。
オーストリアの大学入試は、厳密には「大学入学試験」ではなく、後期中等教育修了資格試験です。後期中等教育(日本の普通高校に相当)の内容を修得したかどうかを試験し、合格すれば、「マトゥーラ」と呼ばれる資格が与えられます。この資格は生涯有効で、例えば、18歳で大学に入学せずに働き、60歳で大学に入学することも可能です。
では、そうした資格試験はどのように行われるのでしょうか。まず、学校で卒業論文とそのプレゼンテーションが課されます。生徒は、自分で課題を設定し、調査し、論文を書きます。
全国統一試験、一教科で5~6時間
次に、全国統一試験が、ドイツ語・数学・外国語で行われます。どれも長い記述問題を含み、5-6時間かけて行われるものです。こんなに長いので、当然、一日一教科です。
最後に、学校で口述試験が行われます。教科内容に関する問題を、5人の試験官の前で、口頭で答えます。口述試験も、2-3教科が必修です。
中世から続く伝統的な試験方法
この口述試験は、中世から続くヨーロッパのもっとも古い、伝統的な試験方法です。口頭で教科の内容の理解を説明したり、考えを述べたりする能力は、記述する能力と同様に重要な能力だと考えられています。
日本の入試制度とはずいぶん異なりますね。私は、こうしたオーストリア、あるいは広くヨーロッパでの大学入試を研究することで、次世代の日本の大学入試のあり方を検討したいと考えています。
「ドイツ語圏の入試改革に関する総合的研究」